世の中はまだ捨てたものじゃない。優しさもあるし、希望だってちゃんとある

 また、強烈に感情を揺さぶられます。

 「ふとした事件」がきっかけで、学校で居場所をなくしてしまった池本。

 戸田は池本が学校に来られなくなった原因は自分にあると考え、彼が来なくなった状況に対して後ろめたさを覚える。

 そんな中、「悪ふざけ」として、池本の机の上にわざわざ花瓶を置くような奴も現れ、それを止めようとすると同性愛者なのかと馬鹿にしたようなことを言われる。

 許せん、こいつ! 中学とか高校の頃って、こういう根性の腐った奴って、クラスに必ず一人か二人いたな、とか、読んでいていくつかの顔が去来します。「その花瓶をこいつの顔面に叩きつけてやれたら!」と頭の奥に熱いものまで芽生えてきました。

 そんな風に理不尽を見て、悔しさ、やるせなさなどを強く覚えさせられます。そうして葛藤する戸田には、後に転機が訪れて。

 戸田と池本のその後。彼らがこれからどうなっていき、後に救いが得られるかどうか。

 自然と深く感情移入させられるため、彼らの「その後」を見ることで、胸の中が軽くなるのを感じました。
 「良かった」と読んで強く思わされました。

 世界の残酷さが描かれる一方で、確実に存在する「優しさ」や「思いやり」も提示してくれる本作。世の中は嫌なものもあるけれど、完全に捨てたものでもない。そんなことも思わせてくれる、とても素敵な作品です。 

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