冒頭の数行でもう、がっちりと心を掴まれました。
主人公が一目ぼれをする。場所は昔ながらの喫茶店で、ナポリタンやクリームソーダが手前にある。
そして、お盆で料理を持ってきてくれた女性の手の美しさに、一瞬で恋に落ちてしまったという。
夏の日、レトロな喫茶店に立ち寄って、同じくレトロなメニューで心と空腹を満たす。それだけでもシチュエーションとして最高過ぎるのに、そこで更に恋に落ちる展開にまで。
この物語の空気感にそこで夢中になり、主人公が憧れの「カナミさん」に片思いを寄せる姿をじっと見守ることになりました。
美しい手の持ち主。彼女とうまく距離を詰めることができないので、せめてもと粘土で手の形を再現しようとする。
「恋をしている時」と「そうでない時」では見えている世界が大きく違う。そんな心の揺れ動き、見えている世界の色づき具合。そして、季節の空気。
主人公の儚くも切ない片想いが、とても鮮烈に心に響いてくる作品でした。