池本のいなくなった教室。
自分を好きだと告白したことで、心ない級友からいじめられて転校したのです。
戸田は彼を助けることができませんでした。
大学生になったころ。
池本の姿をショッピングモールで偶然見かけて、戸田は衝動的に彼を呼び止めました。
気持ちが弾けてしまったのです。
ずっと思っていた事があったのです。
過去は変えられません。
いまではもう互いに違う場所で違う仲間たちとを日々を過ごしています。
放課後の教室も、あの日の図書室も。
思い出のすべては無くなってしまいそうでした。
再会した場所で彼の言葉を聞くまでは。
物語は求める者がある限り、新たな物語をつれてきます。
人の未来もそうであるように。
物語の扉はいま開かれました。
新しい頁が、書き継がれたのです。
この物語を読む方は彼らの新たな日々に
希望を見出すことでしょう。
何かが始まる予感にあふれた作品です。
目にした方には、きっと心に残る。
そんな作品になるはずです。
生まれたころから言葉を使いこなせるわけじゃない。
成長するに従って学習していくものが言葉で、自分の気持ちを正確に伝えられるようになるまでは時間がかかるのだと思います。
作中の二人は会わない間に精神的に成長したというのも勿論ですが、会話のスキルも上がてお互いにちゃんとコミュニケーションできるようになったというところもあるのかなと……勝手な想像ですが。
彼らの心に刻まれた傷はきっと、金継ぎのように跡は残っても傷のない時よりも深い味わいを持ち、乗り越えたものだけが持つ輝きを放っているのでしょう。
繊細な心を描き出す素敵な物語でした。
おすすめです!
また、強烈に感情を揺さぶられます。
「ふとした事件」がきっかけで、学校で居場所をなくしてしまった池本。
戸田は池本が学校に来られなくなった原因は自分にあると考え、彼が来なくなった状況に対して後ろめたさを覚える。
そんな中、「悪ふざけ」として、池本の机の上にわざわざ花瓶を置くような奴も現れ、それを止めようとすると同性愛者なのかと馬鹿にしたようなことを言われる。
許せん、こいつ! 中学とか高校の頃って、こういう根性の腐った奴って、クラスに必ず一人か二人いたな、とか、読んでいていくつかの顔が去来します。「その花瓶をこいつの顔面に叩きつけてやれたら!」と頭の奥に熱いものまで芽生えてきました。
そんな風に理不尽を見て、悔しさ、やるせなさなどを強く覚えさせられます。そうして葛藤する戸田には、後に転機が訪れて。
戸田と池本のその後。彼らがこれからどうなっていき、後に救いが得られるかどうか。
自然と深く感情移入させられるため、彼らの「その後」を見ることで、胸の中が軽くなるのを感じました。
「良かった」と読んで強く思わされました。
世界の残酷さが描かれる一方で、確実に存在する「優しさ」や「思いやり」も提示してくれる本作。世の中は嫌なものもあるけれど、完全に捨てたものでもない。そんなことも思わせてくれる、とても素敵な作品です。