エピローグ

 オレは車を進ませる。


 どんどん、どんどん、街が小さくなっていく。


 風は静かに草木を撫で、車体の進む道はいつまでも旋律を奏でる。


 世界は自分の理想と違っていて、自分は願っていた自分じゃなくて、そんなものはなんの理由にもならなかった。


『——お疲れ様でした』


 突然、車のモニターが切り替わり、アルファベットでMiraという文字が映っていた。


「なんで……いや、直人の車だから当然か。悪いけどオレは直人じゃない」


『承知しております。前主人マスターにより、本機の使用権限は志楽野良様に移行されております』


「そうなのか。君は人工知能なんだろ? いいのか?」


『主人様のように感情のプログラムは必要視されておりません。使用者が変わったところで我々の仕事は変わりませんし、なにも感じません。強いて述べるのなら、大切にしていただけると助かります』


「貰い物だから、当然大事にするよ」


『ありがとうございます。……そして、ここでお詫びもさせていただきます。都市との接続が完全に切れてしまい。二度と情報の更新ができなくなってしまいました』


「それは結果的にどうなるの?」


『都市からの情報を入手することができません。つまり、年月が経過する度に知らないことが増えていくということです』


「それは、直人が意図してやったことか?」


『そうです』


「そっか……まぁどちらにせよ都市に戻らなきゃ情報の更新はされないんだろ?」


『肯定。我々はマスターに助力するだけです。進むも、戻るも、貴方次第です』


「そうだ。折角だし、色々と聞いてもいい?」


『もちろんです。我々はそのために存在しています』


「囚われの街に行きたいんだけど。安全なルートってわかる?」


『存在しません。あそこは危険地区とされており、人間には手に負えられない生物が多数存在します。ベテランでさえ死ぬことがありますので、非推奨です』


「親父にお礼だとか、オレの夢について言いたいんだよ」


非推奨だめです。親父様が生存しているのであれば貴方は街から出ることができるでしょうが、もし死亡していた場合、貴方は囚われの身となってしまう可能性が高いと判断します』


「じゃあ安否の確認もしないとな」


理解不能ばかですか。話を聞いていますか?』


「冗談だよ。そのうち向かうよ」


『肯定。貴方にはまだ経験が足りていません。投機は貴方に知識を与えられますが、判断能力はありません。生きるも死ぬものあなた次第です』


「わかったよ。移都市以外の街に行ってみたいんだけどさ。近くに街はある?」


『回答。ここから一番近い場所は囚われの街になります』


「おい」


冗談ジョークです。元気出ましたか?』


「オレは元々元気だよ」


健康管理メンタルケアも私は出来ます』


 どこがだ。


『先ほどの話ですが、二千キロメートルほど先に、第三調査基地があります』


「調査基地?」


『東京移都市は元々第一調査基地と呼ばれていました。要するに発展しなかった場所です』


「なるほど。じゃあそこに向かうか。ナビを頼む」


『申し訳ありませんが、投機ではおよその方角しか示せません』


「十分だろ」


 オレはハンドルを握って、彼女の液晶に映った矢印の指す方向へと進み出した。


「そうだ。これから宜しくな」


肯定はい。末永く宜しくお願いします』

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そんなものは理由にならない 旧 地を引く たつや @JTatsuya23

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