第12話 『夜空に浮かぶ言葉』

夜空は静かだった。


星が瞬くたび、僕はそっと目を閉じる。

この旅の中で出会った、さまざまな言葉たちを思い出す。


——風の名前を知っている。

あの日、海風がそっと囁いた言葉は、懐かしい記憶とともに胸をくすぐった。


——コーヒーと、君の話。

深夜のカフェで交わした言葉は、静かに心の奥へと溶けていった。


——駅のベンチに座るひと。

終電後の静寂の中、未来を語る声が、今も耳の奥に残っている。


——手紙が届く夜。

時を超えて届いた文字は、あの頃の自分と、今の自分を繋いでくれた。


——月が照らす秘密。

川辺で聞いた歌声は、まるで月の光そのもののように儚かった。


——雨の日の約束。

何年も前の約束が、静かに胸の奥で息をしていた。


——夜の図書館。

誰も読んだことのない物語が、未来の自分をそっと教えてくれた。


——灯台と手紙。

誰かが紡いだ言葉が、時を超えて優しく寄り添った。


——流れ星のいた夜。

瞬く星に願った言葉は、まだ夜空のどこかで生きているのだろう。


——月時計の宿。

人生の時間をほんの少し巻き戻せたなら、僕は何を選ぶだろう。


——さよなら、またね。

別れの言葉の向こう側に、続いていく未来がある。


そして——。


言葉は消えない。

それは、風に乗って消え去ることなく、心のどこかでひっそりと灯り続ける。


夜空に浮かぶ一つ一つの言葉が、誰かの胸に届くように。

その言葉たちは、決して無駄にはならず、いつかどこかで誰かを照らす光となる。


「……あなたに届いた言葉は、ありましたか?」


物語は、終わらない。

そして、あなたの中で続いていく。

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『夜のささやき短編集』 Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter

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