夜闇の温度にじわじわと取り囲まれてゆく物語

淡々としていながらも玉鋼のような鋭さを持つ姫君の語り口を楽しみつつ、文字を繰ってゆく。

薄暗い雰囲気に可笑しみを添える、彼女の言葉と奇想天外な話。それらがじわりと現実と非現実の間を、ぼかしてゆく。

落ち着いた語りを追って耳を傾け、しかしふと物語の終わりに顔を上げると、現実であると思っていた景色は既に闇に囲まれている。もはや色々なものが、取り返しのつかないところまで来ている。

そんな風に、寒さに侵食されてゆくような感覚にさせられる作品でした。

素敵な物語をありがとうございます!

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