夢の中でダンスバトル!

まめでんきゅう–ねこ

打開策

あるアパートに男がいた。男は平凡な人間だったが、ある日ギャンブルにハマってしまい、それが原因で借金を作ってしまった。


借金取りが家へ押しかけるようになってからは、そのショックのあまりギャンブルをやめたものの、肝心の借金を返済できていない。


今日も今日とでまた借金取りが押し寄せる。


男は決意した。自分の何か得意な事で、彼らを撃退できないかと。

得意な事と言えば、子供の頃にダンスを習っていた。


その実力は今も落ちておらず、むしろ子供の頃よりも進化した踊りができる。

これで彼らを魅了すれば、許してくれないだろうか。


だが人前で踊るなんて恥ずかしすぎて自分には無理だ、と男は同時に思っていた。

だから、寝る。


男は考えるのをやめた。



しばらくして、借金取りが1人押しかけてきた。


「おい、ドアを開けろ!」


ドンドンドン


「ざけんじゃねぇぞ!」


ドカァァン


ドアを複数の三角形に切断し、借金取りが男の部屋へ入ってくる。そして怒鳴った。


「何寝てんじゃぁあ!」


どれだけ大声を出しても、男は夢の中から出てこなかった。

その彼の寝顔の気持ち良さに、借金取りは眠くなる。


「ったく、少し寝るか。どうせまだ起きねぇだろうし」


そして神のイタズラか。彼らは同じ夢の世界へやって来た。


夢の世界で男と借金取りは出会ったのだ!


「え、おまっ…ここは⁉︎」


「ここは夢の世界。夢の世界だから、なんでもできるんだ」


布団の上の男は言うと、突然踊り出した。

夢の世界ならば、どれだけ失敗しようが大丈夫だからだ!

このダンスで借金取りを魅了し、帰ってもらう!


「この華麗なるステップを見てごらん」


男の華麗なるステップ。常人には目で追えないほどのスピードと美しさ。そして色気。


「ふーん、まだまだだな」


なんと借金取りも踊り出した。こちらはダイナミックかつ勢いのある回転で、男のものとは180°方向性が違う。


「この動きにッついてこられるかな?」


「面白い…しかし、こちらには秘策がある。見てごらん!」


男はついに、この日のために練習してきた必殺技を発動致した。


「君の踊りをッ全て無効化するよッ」


「何⁉︎」


借金取りが見たのは、男の人間とは思えないほどの美しさの踊り。その全てが、彼の人生を物語っているように感じる。

自己嫌悪に苛まれ、それでも立ち上がるというストーリーが簡単に想像できる。これはもうロマンとしか言いようが無い。


「無理だ、お前のダンスには勝てない。感動した!借金なんて返さんで良い…むしろ金を払わせてくれぇぇ!」


パチパチパチパチ


借金取りはついに膝を床に下ろして、拍手し始めた。


「鍵ならあるさ、腐るほどな」


※鍵:この男が最も好きな言葉…という訳ではなく、彼が咄嗟に思いついた言葉である。


彼はその後、迫り来る借金取りを全員、魅了させて帰らせた。

それどころか、金を稼ぐ事に成功致した。男は自分の進むべき道を見つけたような気がした。


「俺はこれからドリーム・ダンサーになろう!」


いつのまにか借金取りは全員、彼の古参ファンへとなっていた。

男によるダンスで天下無双の人生が今、始まる!

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