【KAC20255】アイドルのあなたと天下無双の剣士である君
桜森よなが
あなたと君
あなたはあるアイドルグループのセンターとして、ステージの上で踊っていた。
今日は東京ドームでの公演、キレキレのダンスであなたは観客を熱中させた。
ライブが大成功に終わった後、帰りのタクシーの中で、同乗していた同じグループのメンバー、高浪にこんなことを言われた。
「お疲れ、今日の美樹のダンス、すごかったね」
「最近、調子いいんだ、よく眠れてるからかな? 布団を新しいのに変えたからそのおかげかも」
「睡眠は大事だよね。どこで買ったやつなの?」
「通販で買ったやつなんだけどね、『いい夢を見られる布団』て紹介のページには書いてあったな」
タクシーから降りて高浪と別れた後、あなたは自宅へ帰った。
お風呂に入った後、すぐにあなたはベッドに飛び込み、ふかふかの布団に包まれて眠った……。
●
天下無双の剣士として有名な君は、仲間たちと共に冒険をしていた。
(これは昔からよく見る夢だ、現実はアイドルとして活動している方……だから君は私じゃない……)
今、君は仲間たちと共に、モンスターを討伐するために森へ入ろうとしていた。
森の中に入ると、仲間たちと共にトロールの群れに囲まれた。
しかし、仲間たちに不安な様子は一切なかった。
君がすぐに、踊るように華麗な剣さばきで次々と敵を切り伏せていったからだ。
その光景はまさに天下無双。
敵が全て倒れた後、仲間の一人――弓使いのハミルが君に言う。
「前からすごかったけど、最近はいつにも増して無双してるな」
「ああ、今、絶好調なんだ。毎日ぐっすり眠れてるからだと思う。布団を新調したおかげだな、ある商人から買ったやつなんだけど、そいつは『いい夢を見られる布団』だって言っていたな」
依頼を終え、家に帰ると、疲れていた君はベッドに倒れ込むようにして眠った……。
●
今日はあなたがアイドルになってからずっと夢見ていた、武道館でのライブがある日だった。
(これは昔からよく見る夢だ、現実は剣士として冒険をしている方……だからあなたは私じゃない……)
会場のステージに立ち、証明の光に包まれたあなたは涙を流す。
夢が叶った。
こんなに大勢の客がいるなんて、まるで現実じゃないみたいだ。
現実?
あれ?
「どっちが現実なんだっけ?」
【KAC20255】アイドルのあなたと天下無双の剣士である君 桜森よなが @yoshinosomei
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