やすらぎ 🌺

上月くるを

やすらぎ 🌺



早暁のまなぶた過ぎり鳥帰る

引残る鴨のごとくに待つ言葉


立ち漕ぎの少年の髪春休

鉄橋の電車の窓に春の雲


寒桜越のツリーや春日傘

廃村の校舎の窓に風光る


奥山の真白きままに牧開

天領の山に池あり春の鹿


投函のポストに迷ふ別れ霜

ローマ字の表札並ぶ花水木


氷河期の子らの果報や雪間草

他人事に冷たき社会花いちご


機密費のためにはたらく泥蛙

球根を胸に育ててヒヤシンス


花ゆすら詩の安らぎにやすらげる

目借りどき犬の鼻紋を押しつけて


掻き鳴すチック・コーリア春夕べ

乱舞せし蝶の如くにジャズピアノ


白樺の幹の皮むけ黄砂降る

金星を画鋲としたる春夕べ




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