【KAC20255】天下無双! アイドルダジャレ大会!

龍軒治政墫

天下無双! アイドルダジャレ大会!

「さぁ、始まりました! 『天下無双! アイドルダジャレ大会』ぃぃぃぃぃぃ!!」

 MCが叫ぶと、パラパラと拍手が起こった。


 売れないアイドルの私は今、予算の無さが見える安っぽいセットのスタジオで、視聴率が取れなさそうな番組の収録にゲストで呼ばれている。


 これ、本当に番組の収録なのだろうか。

 くりぃむナンタラのニセ企画とかなんじゃ……。


 他のゲストで呼ばれているアイドルも、売れてないアイドルである自分から見ても、売れてないと思うアイドルばかりだ。

 そしてMCも売れてない芸人。


 やっぱり、ニセ企画の収録なんじゃ……。

 でも、あの番組にニセ企画で出る芸人さんは売れてないこともないので、やっぱりホンモノかもしれない。

 ホンモノだったら――何か残していきたい。



 MCがゲストのアイドルたちを紹介し、ルール説明を始める。

 自由にダジャレを言って、一番面白かった人が優勝というシンプルなルール。

 どう考えても視聴率取れなさそうだけど、誰が企画を通したのだろう。

 でも、出る以上は、全力を尽くす!


 こうして、ゲストアイドルのダジャレ大会が始まった。

 私は最後だ。


 まず最初のアイドル。

「布団が吹っ飛んだ!」

 ベタだなぁ。

 笑いは起こらない。


 次のアイドル。

「ダンスは済んだ!」

 それはダジャレじゃない! 回文だ!

 MCからもツッコまれてる。

 ワザとだな? 絶対ワザとだ。

 ツッコミをさせて多く映ろうとしているだろ!


 次のアイドル。

「タンスの上でダンスしたんス」

 前の人を参考にしただろ!

 思い付かなかったな?


 次のアイドル。

「車が来るまで待つカー」

 日本語でダジャレをしつつ、英語でも。

 この子、高度だな。

 でも、笑いは起きてない。


 そのあとも何人かアイドルがダジャレを放つが、笑いは起こらない。

 この企画、お蔵入りになりそう。


「いやぁ、最後はドカン! と決めて貰いたいところですねぇ」

 最後に回ってきた私に、MCがハードルを上げてきた。

 このクソMCめ。


「では……」


 いざ順番が回ってくると、さっきまで思い浮かんでいたダジャレが飛んでしまった。

「あぁ……」

 どうしよう。なにか言わないと……。


(あっ)

 カメラの赤く光るタリーランプを見て、閃いた。


「ウルトラマンが髪をかき上げた! ヘアッッ!!」

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