天下無双ダンス剣術大会

るかじま・いらみ

 天下無双ダンス剣術大会

 時は元猫げんニャ四年五月。

 葉木はぎ藩においてダンス剣術の天下無双を決める試合が行われた。

 藩主の名は、鳥異とりい葉木守はぎノかみ妖臓ようぞう

 領内で神の如く振る舞い、容赦無く税を取り立てるためハギトリと呼ばれ、忌み嫌われていた。


 優勝候補の日本舞踊剣が敗れ、ダークホースの西班牙イスパニョーラフラメンコ剣も散った。

 もはや勝敗は誰にもわからなくなっていた。


 試合はついに決勝。

 藩主も見る御前試合である。


 最上段に男が大儀そうに腰掛けた。

 ハギトリの降臨、いやご登場だ。


 太鼓が打ち鳴らされた。


「東〜、犬山お花!」


 藩主が目を剥いた。


 女剣士!


 側に控える家老に聞いた。


「なぜ布団を持っておる、しかも寝巻き姿」


「かの者は、寝ながら燃焼ダイエットダンス剣なる流派。寝っ転がって二刀を振るいまする。布団は尻を痛めないためだと。袴や道着と同じと考え許可しました」


「そんなふざけた流派が強いのか」


「事実、小太刀の阿波踊り剣と琉球ブレイクダンス剣を破っておりまする」


「どう戦うのだ。寝ては踏ん張りが効かんではないか」


「あの異様に盛り上がった首をご覧くだされ。丸太の如く鍛え上げられた首でブリッジしまする。あの首は足二本分の働きをするかと」


 また太鼓が打ち鳴らされた。


「西〜、猿川真介!」


 腰を押さえて体をくの字に曲げ、顔を苦痛に歪めてヨチヨチ歩いている。


「あれはどうしたことだ」


「奴は正統派、社交ダンス一刀流の目録。昔、相方がふくよかになり、支えきれずよろけて腰を痛めたと」


「戦えるのか」


「痛みを堪えよく頑張っておりまする。某、感動しました。ここぞという時にきびきび動き、めりけんジャズダンス剣と仏蘭西フランスバレエフェンシングを破りました」


 二人の剣士が藩主に一礼し、距離をとって向き合った。


「あなたにコンビを解消されて、私はダイエットに目覚めたわ」


「お前のせいで俺は腰がポッキリ、いや今はもういい」


 なんと二人は旧知であった。


 犬山は布団を敷いて寝転がり、両足の指で剣をつかむ。

 見よ、その細身ながら引き締まり、鍛え上げられた身体を!


 猿川は刀を杖のように地に刺して、プルプル震えながら腰を伸ばした。

 見よ、その地獄の痛みに耐えて立つ、痛ましくも勇ましい姿を!


 太鼓が激しく鳴らされた。


「はじめぇっ!!」

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