騙り語られ

はすみらいと

騙り語られ

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 

 とテレビの中の主人公が呟いた。目を、いや。耳を疑った。再生する度に主人公はあの夢を見たのは○回目と数字が毎回変わった。

 最初の数回は聞き間違えだ、と思っていた。けれど9回目と言う頃には、聞き間違えや気のせいではないと確信した。

 再生する度にカウントするなんて、どんな技術だと言いたくもなった。気まぐれに借りてきた、ただの映画のDVDだ。

 なにひとつ変哲のないはずのものだ。気のせいか主人公がそのシーンで向いている顔の角度すら、徐々に変化している気がする。


 どれだけカウントするのだろうそんな、疑問が首をもたげた。何らかの仕掛けが組み込まれていて見ている人を驚かせよう、としているのではないか。そういう商法、そうすることで見た人がネットに書き込み。その書き込みを見た人が買ったり借りて見るそういうやり口。なんではないだろうか。


 あやうくまんまと製作者に、のせられるところだった。なんて思った。中々悪趣味な奴だ。確かに女や子供ならばその手にのるかもしれない。

 でも男である僕がこんな手に踊らされる気などさらさらない。幼稚で馬鹿げている。内容にしたってそう。大して面白いとは言えない。何度も擦った流行り物の二番煎じ以下。B級映画の方が幾分ましだ。小手先だけの技術。

 くだらない。こんな手段を使っている時点で駄目だ。矜持というものが無いのか。



 試しにネットを検索しても指摘している書き込みすら見当たらない。見抜かれ相手にされなかったのだろうか?


 おかしい作品そのもののタイトルすら引っかかりすらしない。

 ずぶの素人が勝手に持ち込んだ作品なのか? もしそうならレンタルできるはずない。店員もグルか? いやいやいや。そこまでするメリットがこの世のどこにある。あるわけない。


 そもそもショップの店員がアマチュア製作したものなんじゃ? 紛れ込ましたのなら可能性は充分あるだろう。今度苦情のひとつでも、いれてやる! とんだ時間の無駄だった。


 パッケージを見て製作者を確認して、認識したはずの脳が記憶の断片を。



 どうして、忘れていたんだろう。こんなこと。



 目から涙がこぼれて、振り返る。そこに居るだろう相手に聞こえるように口から、言葉をこぼした。


 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 製作者:■■■■

 タイトル「yours」

 

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