指先をなぞる夢
あれから何度か同じものを見た…いや、正確には同じではなかった。初めて頭上に地球を見てから数週間して、目を開くと目の前にあったのは巨大な炎…数秒してそれが太陽だと理解した。異常に近くに太陽がある。昔から言われている太陽膨張による終末が突然起こったのかと思ったが、熱を感じないことで前と同じ、夢の中だと気づいた。ここはどこなのかと手がかりを探したけれど、転がる石と異様に近い太陽しかなかった。
次はとても暗い場所だった。皮膚感覚はほとんどなにも無いが、とにかく息苦しかった。足元は硬く、石のようにも氷のようにも感じた。そこにいる間、何度か小さく透明な何かが降ってきた。痛みはないが息苦しいこともあり早く目覚めたいと思った。
ほかにも何度か、どこかに飛ばされては不思議な物事を見るだけ見て戻されることを繰り返した。
そんな夢を見ることも減ってしばらくして、ネットニュースで見た。5年後に火星での有人探査が行われることが発表されたらしい。半世紀以上昔に月に降り立って以降、その先に向かうことができていなかった人類が、とうとう隣の惑星に足を踏み入れようとしている。参加したい、と一瞬思った。僕は向いていないと自分ですぐに否定した。自分が初めて足跡をつける人間になりたいとは思わない。ある程度進んで、行こうと思えば誰でも行けるようになってから、観光に行くように行く方がいい。そう、無理に今行こうとしなくても人類はいつか自由に星を渡ることができるようになるはず、それを信じて今は待った方がいい。
その日の夜、またあの夢を、景色を見た。
夢に見た宇宙へ なと @Natonato
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