胡蝶之夢
口一 二三四
夢10夜
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
それだけは覚えてる。
確かに私は少なくともあの夢をそれだけの数見ている。
でもどういうわけかその内容が思い出せない。
大事なことなんだ。きっと。
大事だった気がするんだ。
あの夢を見たのは、これで8回目だった。
また減った。また減ってしまった。
このままだと大変なことになる。
何故そんなことがわかる。
もう内容すら覚えてないのに。
何故だ。何故だ。
誰か私に教えてくれ。
誰か。頼む。
あの夢を見たのは、これで7回目だった。
本当に。本当にそうなのか。
もうそんな数になってしまったのか。
気づいてないだけで本当はもっと見ているのではないか。
内容すらわからない夢を。
もう輪郭すら見えない夢を。
あの夢を見たのは、これで6回目だった。
油断すればそれすらもわからなくなってきた。
減っていく夢の数。数えることに意味なんてあるのか。
あった気がする。ない気がする。
数。そうだ数だ。これを忘れてはいけない。
あの夢を見たのは、これで5回目だった。
私は私を信じれなくなっている。
私は私じゃないような気がする。
私である定義は。
私である意味は。
私とは何か。
私とは何だ。
私を私と肯定する。
私が私を否定する。
二つある。
あの夢を見たのは、これで4回目だった。
減っている。減っている。
意味ない数が減っていく。
わからないわからない。
どうして減っていくのか。
大事なものなのに。
大切なものなのに。
何が。何故だ。
違う違う違う違う。
あの夢を見たのは、これで3回目だった。
減っている。それはわかる。
減っている。それがわからない。
数だ。数が減っている。
何の数だこれは。
私は何の数を心配しているんだ。
夢。夢がどうした。
どういうことなんだ。
あの夢を見たのは、これで2回目だった。
どんな夢だ。わからない。
何の数だ。わからない。
私は今どこにいて何を考えどうしたい。
わからない。わからない。
わからないことがわからない。
もう全てが曖昧だ。
全て夢だ。
あの夢を見たのは、これで1回目だった。
思い出した。
思い出した思い出した思い出した思い出した。
そうだ私は夢を見ていた。
同じ夢をずっと見ていた。
一生と言える数の。
今の私はどっちだ。
どっちの私が。夢なんだ。
胡蝶之夢 口一 二三四 @xP__Px
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