空気の匂いさえ感じられるような異文化の手触り
- ★★★ Excellent!!!
ロマ(ジプシー)の文化を研究している主人公が研究のためにロマの女性と便宜上「結婚」する話なのですが、あまりに現実味があり、ラスト付近までエッセイだとばかり思っていました。
若干ホラー味を感じる不穏なラストは「小説」でしたが、この濃厚な異文化の描写は、相当にロマの文化を理解し、現地に足を運んだ人間にしか書けない気がします。
仮にそうでないとしたらとんでもない想像力であり、いずれにしてもこの異文化体験は一読の価値があるものです。
我々の常識が、その所属する文化によって規定されたものでしかないことや、文化が違っても普遍のものである人間の本質を改めて感じさせてくれます。