ちょっと変わった女の先輩が、ラブコメラノベにしか存在しないような「謎部活」を作り、巻き込まれた主人公が半ば惹かれ、半ば呆れつつ付き合う話……なんですが、この先輩が可愛いんだ、これが。天然のエキセントリックではない、ちょっと変わっていると思われたい自認ハルヒ的な一周まわった可愛さ。しかも世の中を冷めた目で見ているくせに、肝心なところで詰めが甘い。
5000文字の短編で完全に主人公視点、説明的な部分もないのに、そうした先輩の屈折した可愛さが手に取るように伝わってくる。
彼女が以前に言ったであろうオオカミ女という設定を主人公が信じているのか、読者に対して信じているフリをしているのか、そこが分からない「信頼できない語り手」っぷりもまた良し。
文章も淡々としつつユーモアがあってぐいぐい読ませる。
秋の夜にオススメの短編です!