まっすぐに自身の感情に向き合うことの美しさ

大きな事件はないけれど、小さな出来事の積み重ねが少しずつ人を変えていく。
この本当にありそうな感じがたまらない。

登場人物たちの造形も素晴らしく、情報の溢れる現代の中で自分を客観視しつつも、それぞれがまっすぐに自身の感情に向き合っている姿が瑞々しく、好感が持てる。
主人公、洋ちゃん、犬丸ちゃん、三人とも本当に素敵な若者たちだ。

ラストの美しさも特筆もの。
娯楽作品としては激しさがなく、文学と呼ぶには爽やかすぎるかもしれないが、そうした過剰さを排した純粋な物語がここにある。