VTuber文化を愛する者たちに捧げる、稀代の怪作にして快作!

VTuberを題材とした作品は数あれど、このぶっ飛び具合はなかなか一線を画しています。

VTuberをこよなく愛する主人公は、VTuberが安心して配信活動ができるよう、VTuber専用のマンションを建てたわけですが……普通に考えたらそんな怪しいマンションに入居したくないですよね? なんか下心ありそうだし。そこで主人公が入居者の安全を保証し、信頼を得るために行ったのは、自ら去勢手術を受けるという暴挙。

こう書くと「そんな主人公には感情移入できないのでは……」と不安になる方もいるかと思いますが、安心してください! おかしいのは主人公だけじゃありません! メインヒロインは「ふたなりフェチ」でいきなりふたなりの話を熱く語りだすし、入居者たちはみんなどこかおかしく、真っ当には生きられそうもない社会不適合者ばかり。

しかし軽妙な文体から繰り出される謎の数々に翻弄され、気づけば読者はこの世界の虜に……!
真っ当には生きられない彼ら彼女たちがそれぞれに抱えたものと、それぞれの成長。それはVTuberという文化が、ある意味では社会の主流から外れた人々に生きるすべを提供してきたことの反映であり、そうした人々に対するVTuberファン(おそらくこの作者も含む)の温かい眼差しの顕れでもあります。

ちなみにこのマンション、タイトル通り炎上します。入居者たちが炎上すると、マンションがリアルで火事になり、主人公は過去にタイムリープするという謎仕様。主人公はそのループから抜け出すため、入居者一人ひとりに目を配り、炎上を回避しようと奮闘するわけですが、そもそもなんでタイムリープしちゃうわけ……?

もちろんこれはファンタジーです。現実にはあり得ない話でしょう。
しかしすべての謎が解かれたとき、私は激しく同意して膝を打ちました。
それはそうなる! 納得しかない!
2018年のVTuber元年からVTuber文化を知っている貴方なら、納得するしかないでしょう。

そしてこんなメチャクチャな導入からは想像もできなかった感動の結末。
おいおい、天才かよ!

その結末はぜひ貴方自身の目で確かめてみてください!

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