五秒で読める掌編集


【香水】



「大変っ大変っ、先輩が家にくるのに、汗臭いままなんて最悪っっ!! とりあえず『これ』で匂いを誤魔化して――」



「う、姉ちゃん……香水かけ過ぎて、臭いんだけど……」











【怪我の功名】



「クソ、迷惑客のせいで全店舗一斉メンテナンスだ……っ、機械のメンテナンスをするのだってタダじゃねえんだぞ……ッ。

 客の足が遠のいているからまだマシだが――これが普段通りの客足だったらと思うとゾッとするな」


「てんちょー、なんかー、機械の下からぁ、よく分からない部品が出てきたんですけどー」

「おう…………なんだこれ、どこの部品?」



「どこでしょう……、大事故が起こる前に見つかって良かったですねぇ」











【ホスピタリティ】


「検査の結果…………『異常なし』でした。良かったですね」

「……いいんですか?」


「え? それはもちろん。体になにも異常がないに越したことはないですし」


「でも、病院にきて、異常がないって……なんだかまるで、『洋服屋さんでたくさんの服を試着しておきながら、なにも買わずに出ていった』みたいな罪悪感があるんですけど……」



「気にし過ぎです。それを気にしないお薬、出しておきましょうか?」











【全人類、お互いさま】


「誰がなにを言っても、それはお互い様ですよ。だって我々は『球体』ではありませんから。

 転がったら壁にぶつかるまで止まらないような性格ではありません。色々な一面がある。そうじゃないと思われている人は、他の一面を下に向けるのが上手いんでしょうね」


「人間は球体ではなく、サイコロだと?」


「六面以上の、ですけどね」











【50ではなく、150】



「酒が飲めないなんて、人生の半分損してるだろ」



「損してる? 君が得してるだけで、僕は損してないよ?」











【レベル2】



「バツイチの女なんてさ、中古だから嫌だよね……?」



「中古って……言い方が悪くない? 男女関係なく、バツイチは『強くてニューゲーム』でしょ」











【見送る言葉】



「『ディする』って、もしかして死語になってます?」



「使ってる人はまあいるんじゃないですか? でも私たちの界隈では使っていませんね。

 局地的なところでは死語になってます……なので『デスってる』、と言えますね」











【自己紹介】



「では手短に。……初めまして。自己紹介をさせていただきます、森本もりもと、と申します。この会社に入ったのは一週間前でして――

 この会社の前社長とは古い知り合いで、私が失業した際に声をかけていただき、今に至ります。分からないことばかりで、これからみなさまのお力になれるよう努力してまいりますので、どうかよろしくお願いします」



「手短に? 長いよ……寿限無かと思ったわ!」




 …おわり

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