旅団の馬車から誤って落下してから二時間が経過している。
荷物は全て馬車の中だ。
そのため、この身一つで大地を歩く。
武器は、道中で拾った木の棒であった。
しばらくすると足を止め、握り締める手に力が込められる。
後ろを向いて――無警戒な、小さな魔物がいたのだ。
愛くるしい愛玩動物のようだが、牙が鋭く、炎も吐ける魔物である。
少年がゆっくりと近づき、木の棒を振り上げ、魔物に襲いかかった。
しかし、いち早く気づいた魔物が、機敏な動きで棒の射程距離外へ出てしまう。
驚いた魔物が、少年に向かって炎を吐いた……——握り拳くらいの火の玉だ。
容易に避けられる攻撃だ。それゆえに最弱の魔物として代表される相手なのだが、少年は結局、顔中を煤だらけにし、魔物を逃がしてしまった。
「また失敗だ……」
たぶん、同じ相手だろう。つまり、連敗中であった。
少年の名は――、オットイ。
レベル1だが、一応、これでも勇者である。
・・・過去作「旅する勇者がきらう町」のプロモーション掌編でした