2度目の人生もあなたと

@naruha_tomato

第1話

「大好きだよ、おやすみ」


背中に感じる暖かさとあなたの香りに包まれて寝るのが好きだった。

守られているような安心感にいつまでもいつまでも浸っていたかった。

朝になる頃には気づけばお互いに背を向けていたりして、寝ているあなたを起こさないようにもう一度くっついてみたりして。


いつか終わりが来るとしても、おじいちゃんおばあちゃんになってもこのままだと、そう信じていたのに。

どうか神様。あの暖かさをもう一度_____


—--------


そんなことを特によく考えるようになったのは2度目の人生でも思春期に入った頃からだろうか。

1度目の記憶をそのままにしても、幼い頃は物心つかず、それが夢なのかなにかもわからずにいた。


1度目の人生では、もう一度やり直せるなら上手くやれるのになんてよく思ったものだが、人はそう簡単に変わらないし、そうそう思うようにはならないものだ。

全く同じ家族に全く同じ能力をもった自分として生まれたのだからなおさらだ。

ただ中学に入るくらいになると、1度目の教訓を生かして少しだけ勉強や美容に力をいれれたし、周りより大人びたところのある子だったように思う。

高校生になった今でもそれは変わらない。


ただ選択を変えれば変えるほど前世と変わっていってしまうのが怖くてだんだん同じように同じように生きるようになった。

もっと上手く生きられるはずという欲も出るが、そうしたくないのは彼に会えなくなるのがなによりも怖いからだ。

彼との初対面は大学生のときだった。それまでは持ちこたえなければ。


彼の名前をネットで検索して、彼が今世でも同じように生きていることはわかっていた。

小学生の頃のボランティア活動に参加した記事に名前と幼い顔の写真が載っていた。

たまに検索して眺めると安心した。

彼ともう一度繋がるための命綱のような気がして。


前世の死因は交通事故だった。

結婚してしばらく、初めて買った、慣れない車での運転中だった。

彼は即死だった。

頭と背中に強く痛みを感じながら、ベッドの中でそれを知った時の絶望は忘れられない。

嘘だ。嘘だ。そんな。

彼を失ってこの先どうやって生きていけばいいのか。


その後私は事故の怪我を拗らせ2週間あまりで亡くなった。命に別状はないはずだったのに、彼のいない世界を上手く生きられなかったのだ。


だから。

何かのきっかけで彼をまた失うかもしれないのが、とても、とても、怖くて。

2度目というハンデをもらっているにも関わらずとても臆病になってしまっていた。


—--------


前世第2志望で入った大学に第1志望で入った。

同じサークルに彼がいる…はずだった。

いない。なぜ?!

大学の名簿をぐりぐりと撫で回すように見たがどう見てもいない。

どうして…。


ネットでも彼の足取りはつかめなくなっていた。

彼の好きだった店や一人暮らししていたマンションの周りをストーカーのように週1,2の頻度で足繁く通ったが、見当たらない。


どこかでした選択のせいで未来が変わってしまったのか。


もう一度彼を失った気がした。


—--------


絶望して、落ち込んで、数ヶ月たったころにだんだんと落ち着いてきた。

思えば前世では悲しみを乗り越える時間がたりなかった。

なぜ私だけ2度目の記憶があるのか、きっとそういう人もいるのだろうと深く考えたこともなかったが、神様が特別に時間をくれたのかもしれない。


それに今世ではまだ彼はどこかで生きている。

私がドライブに連れ出さなければインドアな彼は交通事故に会うこともないだろう。


彼と出会うことを目標に、1度目の人生のハンデを頼りに2度目の人生をなあなあにしてきてしまったことを反省した。


家族や友達を1度目よりも大切にしよう。せっかく就職も1度目よりよいところにチャレンジしてみよう。


それでもできれば、あなたにどこかで会えれば…。


—--------


その時は意外にも早く訪れた。

半年が経った頃、サークルの他大学との合同練習に彼がいたのだ。


「みゆ!久しぶり!」


今世では初対面なはずなのに目が合ってすぐに躊躇いもなく声をかけてきてびっくりした。

彼だ。

間違いない。


「ゆうた、どうして。」


どうして覚えているのか。

どうして他の大学にいるのか。

ならどうして会いに来てくれなかったのか。


「やっぱりみゆも覚えてたんだ!」


聞けば、せっかくならと前世の記憶を生かしていい大学へ進んだらしかった。


「一応探したんだよ!でも見つからなかったし、みゆだって前世と一緒とは限らないしさ〜」


まぁどっかで会えるでしょって思ってた!

と無邪気に笑う顔をみて脱力した。


こちらがどんな気持ちでいたかも知らないで、と腹が立ったが同時にこういう人だったなぁとも思う。

会わない間に美化していたのかも。

でもこのあまり深く考えないポジティブなところが好きだったのだとも思う。


いい大学に行って前世より条件のいいところに就職すれば、前より余裕ができて一緒に過ごす時間が増えると、そう考えてくれていたらしかった。

まぁ、私のことを考えてくれていたならいいけどっ。


「全くしょうがないなぁ」


えー?なんて、なぜ怒られたのかピンとこない顔をしながら笑うゆうたを愛おしく思う。

これから2人で新しい人生を作っていこうね。

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