摩訶不思議アドベンチャー!

藤泉都理

摩訶不思議アドベンチャー!




 ねえねえ、知っている。

 私たちの中学校の七不思議の一つ。

 三月十一日の午後十一時三分に図書室に行って、電気をつけないで立ったまま少し待っていると、突然目の前に本が現れるんだって。

 宙に浮いて表紙が金色のその本を開くと、中から金色の妖精が現れるんだって。

 その妖精はね、問答無用で金色の粉を振りかけて、本を開いた人を自由自在に飛べるようにしてくれるんだって。

 ただし、午前零時になるまでの、およそ五十五分間だけ。


 ねえ、あなたはもし五十五分間、自由自在に飛翔できるとしたら、自由自在にどこにでも飛んでいけるとしたら、どこへ行きたい。






 放課後の事である。

 生徒の噂話を聞くともなしに耳にしていた六十代の校長である田代たしろは、長らくこの中学校に勤めているが初めて聞くなあ、最近になって生徒が生み出したのかなあとのんびり思いながらも、にんまりと笑った。

 七不思議なんてとっくに絶滅していたと思っていたのだが、生徒が復活させてくれた事に対する喜びと、摩訶不思議追究会の血が煮え滾り、冒険心が限界突破し、折しも三月十一日である本日、早速午後十一時三分に図書室に行く事が決定されたのであった。


(その前に用意しないといけませんなあ)


 仕事を終えると、中学校の近所にある自宅へと直行。

 夕食をしっかり食べて、物置の奥に仕舞っていた段ボールを引っ張り出し、夜中だからいいだろうと衣装を身に着けて小道具を抱えて、中学校へと戻ったのであった。






「「………」」


 こんな夜中に未成年が一人で何をしているんだ、いくら在校生とはいえ不法侵入者など絶対にしてはいけない保護者に連絡するので職員室でついてきなさいと厳重注意をしなければ。

 田代の頭に超特急で通り過ぎる教育者としての言葉はしかし、口に出る事はなく。

 懐中電灯に照らされては怯えた表情を浮かべる在校生、武藤むとうの格好を見ては、今日だけは見逃しますよと念を押し、顔を輝かせる武藤と共に図書室へと足を踏み入れたのであった。






「今って、そういう服装が流行っているのね」


 妙に感心する金色の妖精に問答無用で金色の粉を振りかけられた田代と武藤。足に金色のふかふかの雲をくっつけては、勢いよく図書室の窓から飛び出したのであった。












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