底辺作家のあこがれ
折原さゆみ
第1話
「自分の作品に自信がなくなりました」
もともと才能がないのは知っていた。
「あるアニメを一気見して、それが私には真似できない、スゴイ内容で」
「世の中、すごい人はいますから」
「巨人のアニメはスゴイ作品でした。そこに今回見た作品が加わりました」
私は夫に、最近一気見したアニメについて熱弁する。
「地動説についてのアニメです。まさか、主人公だと思っていた少年がああなるとは。歴史的な話になるので、軽い気持ちでは見られないですが」
「それで、あなたの作品の投稿が滞っていると」
せっかく気分よく話していたのに、彼が水を差すようなことを言ってきた。
「最近、あなたの作品の投稿がなかったので、そのせいかと」
「だって」
言い訳になってしまうが、私は彼に反論する。
「世の中はスゴイ作品で溢れています!それを目にしたら、私のチンケな作品は、面白くないと思ってしまって」
しかし、後半の言葉は尻すぼみになってしまう。わかっている。私は才能がないと言っても、他の人よりも文章を書くことができる。実際、十万字以上の作品を何作品か完結させている実績がある。
「はあ」
彼に大きな溜息をつかれてしまう。私に幻滅しただろうか。ち彼の様子をうかがうが、表情からはどんな事を考えているのか読み取れない。
「あなたに才能がないわけじゃない。実際、僕はあなたの作品が面白い、続きが読みたいと思っている。僕はあなたにあこがれを抱いている。こんな面白い作品を世に出すあなたを尊敬している。あこがれの存在だ」
「あこがれ」
「あなたが他の作品、作者に対して、あこがれを抱くのは構わない。だけど、それは自分自身を卑下することではない。あなたにはあなたの良さがあるので、自信を失わないで欲しい。あなたの作品を心待ちにしている人がいることを忘れないで欲しい」
そうか。私の作品のファンがいるのを忘れていた。その人たちにとって、私はあこがれの存在だ。
「ありがとうございます。これからも精進します」
「頑張ってください」
私は彼の言葉によって、頑張る決意がついた。他作品にあこがれを抱くこともあるが、今後は自分自身も誰かのあこがれとなるような作品を作っていけるよう努力しようと誓った。
底辺作家のあこがれ 折原さゆみ @orihara192
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます