第6話 経過報告

「はい、課長まだ起きていたのね」

[わたし達は一応、他の人より暗闇に対する耐性があるからね]


 研究所を出たところで課長へ連絡をとる。

 既に深夜を回っていたが、課長は即座に応答した。


[それで、研究所ではなにか分かったかしら?]


 課長の問いに答えながら、わたしは誰も歩いていない街路を1人歩いていく。

 とりあえず移動するための足が必要なので、車を借りれられるところを目指して。


[……、そう分かったわ。]


 一通りわたしが仮説を説明すると課長は理解した旨を返してきた。


[こちらでも、その仮説の実在性を検証するけど、今は対処療法が必要ね。あなたはそのまま次の目的地へ行って]


 そう告げると課長は一方的に通話を解除した。

 わたしも同じ結論だったが、せめてこちらの言い分を最後まで聞いてほしいとこだった。

 ともあれ、わたしは目的地を目指して歩き続けている。


 妖精スプライトならば、それは魔法でも奇跡でもなんでもない。

 科学で対抗できる自然現象だ。

 でも既に局地極光が世界的に観測されている以上、変異は世界全体で起こる可能性がある。

 そんな世界レベルの問題に精神科学サイコ・テクノロジーを駆使して対抗しようとするならば、頼るべき相手は一人だけだ。

 わたし自身にも色々因縁のある相手だが、できれば会いたくない人物でもある。


 彼はわたし達が作られる原因を作った張本人であり、会長ばあちゃんの旧知の同僚。

 恐らく今も研究を続けているのだろうが、今はどのような姿をしているのだろうか。

 案外、わたしと出会ったときと同じ場所で同じ姿でいるかも知れない。

 そうなると色々面倒だなと考えているうちに、次の目的地が見えてきた。

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【回天堂キ譚】トリノ光臨篇3 妖精事変 サイノメ @DICE-ROLL

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