イントレーダー

美里俊

第1話 Childhood

子供の頃、近所の公園で友達と遊んでいた時のことだ。友達とサッカーをしていると、ふと妙な視線を感じた。振り返るとベンチに座る1人のおっさんが、こちらをじっと見ており、その目はまるで自分たちが楽しそうにしていることをうるさいと思うのではなく、憎んでいるような、そんなやさぐれた目だった。


やにわにシワだらけの新聞を開き、ブツブツとやれ政治が悪いとか、やれ景気が悪いとか、自分は社会の被害者なんだ、と言った不満をこぼしていた。


「俺もよ!ガキの頃はもっと夢があったんだ!それがよ、いつの間にか夢は夢で終わってよ、現実ばかり見るしかなくなった!ずっと耐えてきた!何もかも諦めてきた!


でも、諦めきれなくてよ、とうとう夢に賭けたんだ!俺の金を、俺の全てをよ!それがどうだ、負けに負け越し、金持ちになるっていう俺の夢は、見事にこのざまだ!クソッタレ、何が情報だ!こんなもんいくら読んでも、何も役に立ちやしねえじゃねえか!」


おっさんは、新聞紙をビリビリに破いて、その場に紙吹雪のように投げ散らした。


「おい、やべえよあのおっさん。違うところ行こうぜ。」


「ああ、だな。あれは完全にいっちゃってるわ。」


「金のことでおかしくなるやつが1番やべえって父ちゃんが言ってた。多分、あのおっさん馬に金を出したんじゃねえかな?」


「馬?馬を買ったってこと?めっちゃ金持ちじゃん!」


「バカ、違えよ!馬を買ったんじゃねえ。馬のレースに金を出したんだよ!競馬って言って、うちの父ちゃん警備員の仕事してるから、よく話聞くんだけど、そのレースで勝つと思った馬が1位になったら儲けられっけど、外れたら金が無くなるだけ。


だから、レース終わったら負けた奴らがキレて父ちゃんたち警備員たちに当たり散らすんだとよ!」


「そいつは、お前の父ちゃんも大変だな。大人ってそんなのに金出すのか。俺だったらゲームとか漫画とか、新しいシューズとか買うけどな。」


「俺もそうだな。でも、当たるとそのお金が増えるらしいぜ!」


「へえー。でもさ、負けたらとられ損ってことだろ?なら、食べ物買って味わったりした方が、同じ無くなるでも、楽しめた分だけ違う気がするけどな。」


「たぶん、金を使うこと自体を楽しんでんじゃね?」


「理解できないな。目の前に見えるものになった方が嬉しいけどな。」


話しながら、公園の出口までたどり着いた。おっさんさんは、まだ向こうでギャンギャン叫んでる。


「おい、ちょっと来いよ!」


僕は、おっさんに手のひらを向け、それをグッと握る。おっさんは視界から見えなくなり、まるで拳の中で握られてるかのように見えた。


「おい、あんまりうるさいと握りつぶすぞ!潰されたくなかったら、その汚い口を閉じな!」


仲間はみんなゲラゲラ笑ってる。


「おい、拳の中からまだ声が聞こえるぞ!」


「こりゃあ、じわじわ力入れるしかねえな。」


ギュッと拳を握りしめる。


「ギャッー!わかった、わかった!助けてくれ!もう突然おかしくなったりしねえからよ!」


僕は、舌を出しながら、大袈裟にひょうきんな声でおっさんを演じる。


仲間たちはみんな腹を抱えて笑う。


「おい、てめえら、いってえ何言ってやかなまあさら!かまたさらまのははか!!」


おっさんが向こうからおぼつかない足でやって来る!


「ハーハッハッハッ!やべえ、逃げろ!!」


みんな笑いながら、公園を脱出する。僕も、笑いながらヒイヒイ走った。


みんな突然追われたものだから、集合場所も決めず、そのまま解散になった。


僕は、コンビニにでも寄って、肉まんでも買ってから帰ろうと思った。ポケットの財布を取り出そうとしたら、さっきのおっさんが蒔いた新聞紙の端きれが何枚か入ってた。


「うえっ、こんなの捨てねえと。」


僕は、子供心にあんな大人には絶対ならないぞなどと思った。そう思いつつ、ふとその端きれを見たら、


「関点堂 1045.0 910.3…」


と、自分の好きなゲーム会社の名前が数字とともに入っていた。


「これ、一体何の数字だ?暗号?そういや、他の会社みたいな名前も書いてあるな。会社とこの数字に、何か意味があるのかな?」


この時の僕には全くわからない数字だった。

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イントレーダー 美里俊 @Misa1389

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