都市伝説の正体

都市伝説の正体

　トリの降臨――簡単に言えば、俺らの住む町の都市伝説というやつだ。儀式をすれば、翼に関係があってこの世に存在したことがあるものを、ふとした瞬間に目にできるというものだ。

　やり方は簡単。神社の境内に直立して、『もし神様がいるのなら○○に会いたい』と10回心の中で唱えるだけ。注意点は、唱えた○○をいかなる形でも伝えてはいけないことだ。もし伝えた場合は、しばらくの間お目にかかれなくなるという罰が下るらしい。ちなみに、お目にかかった後で口外するのはOKらしい。

　最近聞いた話だけど、儀式でレッ○ブルを唱えた奴が居て、トリの降臨のことを面白半分で友達に言って回った。そしたらそのあと1週間、ふらっと寄ったコンビニでそれがことごとく売り切れで買えなかったらしい。

　確かに翼を授けるって文句で宣伝してる商品だし、口外してるから罰が下ってる。

　もちろん、ちゃんと儀式の効果が出た例もある。友達が儀式をしてから、先週末家族でハイキングに行った。結構きつかったみたいで、最後の方は足を動かすので精一杯だった。なんとかゴールに到着してふと空を見たら、憧れの雷鳥が飛んでいくのが見えたらしい。

　これだけじゃ信じられないかもだけど、今挙げた例以外にも数多（あまた）のエピソードを聞いたことがある。時代も今昔様々だし直近で親友が成功させてるしで、嫌でも信憑性が俺の中で高まってきてる。

　俺もお目にかかりたい人がいるから、やってみる価値はあるな。そう思って、サッカー部の帰りに神社に寄って儀式をしてみた。

　ほんとにこんなんで効果あんのか？

　疑いながらも鳥居をくぐると、鳥の鳴き声がする。空を見てみると、黒い鳥たちの中に一際大きな鳥が混じって飛んでいる。

「マジかよ……」

　その姿を見てすぐに察した。トリの降臨は都市伝説じゃなくて、紛れもない伝説だったんだと。

　俺が唱えたのは鳥の名前（それ）じゃない。憧れのサッカー選手――秦野（はたの）翼（つばさ）の名を唱えたのだが……。

　あぁ、そうか。人名が対象外だったのを忘れてた。だから、代表のユニフォーム描かれてる導きの神――八咫烏（やたがらす）をお目にかかれたのか。

　図らずも俺はこの都市伝説の正体を知ってしまった。道理で、やけに叶ったり叶わなかったりする訳だ。