とある勇者の最期
みちのあかり
あこがれ
勇者様は俺の憧れの存在だった。
欲にまみれた魔王を討つため、聖女・賢者・魔導士を仲間にし、つらい戦いに身を投じた勇者一行。
孤児だった俺は、彼らの邪魔をしないようにひっそりと荷物運び、いわゆるポーターとして雇われていた。
魔王を倒し英雄となった勇者一行は、カク・ヨーム神の紋章『トリ』の旗がひしめく街の中をパレードしている。
その姿を見終わった後、「どこで死んでもこいつなら誰も悲しまないだろう」と討伐に連れていかれた俺は、わずかな謝礼を持たされスラム街に戻った。
成長した孤児の扱いなんてそんなものだ。英雄の仲間入りなどできるものではない。
選ばれし者たちと、金で雇われたその他大勢とで扱いが違うのは当然のこと。
それでも俺は勇者を尊敬し、その姿に憧れを抱いていた。
◇
勇者と聖女は結婚した。
賢者は政治の中心に収まった。
魔導士は己の研究に没頭した。
しかし人は変わるものだ。
賢者は政治を通じて私利私欲に走った。
魔導士は禁忌の魔法に手を出した。
聖女は処女ではなくなり資格と能力を喪失した。失いつつある若さへの執着も激しくなっていった。
勇者は……。
勇者は過去の栄光と一度覚えた贅沢に捕らわれ、もらった報奨金も数年で使い果たした。残ったのは膨れ上がったプライドと借金。
そして四人は新たな魔王とその仲間として降臨したのだ。
前回の魔王も、その前の魔王も、隠されてはいたがいつも勇者のなれの果て。
呪いでも掛かっているのではないだろうか。
そのことを知らされ、今度は俺が勇者の立場になった。
信じられるか? 荷物運びの孤児上がりの俺がだぜ。
まあいい。憧れてた勇者一行は結局
与えられた役割は果たしてやる。
俺は三人の仲間を与えられ、魔王討伐の旅に出た。
◇
長く苦しい旅の最後。憧れの元勇者一行の目前にいた。
「ははは。ポーターのお前が今の勇者か。ずいぶん偉くなったじゃないか」
つまらなそうに魔王が嗤う。
「勇者一行は俺の憧れだった。なぜこんなことに」
「お前もなれば分かる。俺を倒せばな」
戦いは長くは続かなかった。魔王一行は勝つ気がないような戦闘で俺たちと戦っていた。次々と倒れ、ついに魔王に止めを刺した。
「それでいい。遺言代わりに俺の最後の魔法を見せてやる。『トリの降臨』」
魔法陣が浮かび上がり、まばゆい光があふれた。
「お前たちの未来を……見るがいいさ」
魔王がこと切れ、巨大なまん丸いトリが現れた。
「我を呼び出したのはこやつらか。我が身の糧となれ」
トリは元勇者一行を自分の身に取り込んだ。
「なるほど。こやつらの願いを叶えよう。見るがいい、おぬしらの未来を」
壁に映像が映し出された。承認欲求に囚われ落ちぶれて行く俺たちの未来が。
「一度、強烈な光を浴びてしまったものは、いつまでも光を求めてしまう。ましてや自分自身が
歴代の、魔王に堕ちた勇者たちの記憶が映し出される。何だこれは。まるで呪いではないか。
「
トリはそのまま消えていった。
魔王、いや元勇者はどんな思いでこれを俺たちに見せようと思った?
その思いに気が付いた時、おれは三人の仲間を斬った。
「なぜ?」
「勇者よ」
「それでいい」
そう。呪いはここで断ち切らねばならない。
俺は自分の首に聖剣を突き刺した。
とある勇者の最期 みちのあかり @kuroneko-kanmidou
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