おばあちゃん家に帰ったら、見知らぬ和装の美男&美女が居た件について

アルパカ狂信者

第1話

「おばぁちゃん〜、ただいま〜」

実家は相変わらずしんと、静まり返っている。

「んー、留守とかかなー?多分近くのスーパーか、近くの畑とか行ってるとか、かな?」

そう。が聞こえてきたのは、居間の障子に手を掛けた時の事だった。


「えっ!?どうするの!?人来ちゃったじゃない?!」

「あっ、馬鹿!お前、大きい声出したら……!」


私は、勢いで、障子を開け放ってしまっていた。そして、そこに居たのは、和装の美男美女の2人だった。


「えー、えっーと不審者、ですか?」

「だ、断じて違う!!」

「そ、そうよ!!私は、いいえ私達は、怪しくなんか……!」

「もしもし、警察ですか?家に怪しい人が……」

「おぉぉぉぅぅぃい!!ちょっと待て!!」

男に右腕を掴まれたかと、思えば、今度は、左腕を女の方に掴まれる。

「え?」

「私達は……!いいえ。特に男の方は、いいえ、は、怪しく見えるかも知れない」

「おいっ、雛?!」

「私達は、お雛様とお内裏様、なの。」

「へー。そうなんですか……。って、んな事有ります?!あっ、分かった!これ、自分を、お雛様、お内裏様だと思ってるタイプの痛いヤツだ!」

「し、失礼な!ち、違うわよ!本当に、お雛様とお内裏様なのよ!」

「え〜、ますます痛そう……。じゃあ、証拠は有るんですか〜?」

「ええ!勿論よ!貴女が10歳の時、お供えの雛あられをおばぁちゃんに無断で勝手に食べて、私達に罪を擦りつけたじゃない!全く、忘れもしないわ!」

「えっ!何で、ソレを!」

「まぁ、私もお内裏様も、少し貰ったけどね!」

「いや、雛!それは、言わない約束だろ?!」

「いや、アンタらも食ったんかーい!というか、私の嘘ほんまやったん!!……って、セルフで、ツッこんで、しもたやないかーい!」

「ふふっ。まさに、嘘から出た真ね。雛あられ、とっーーても、美味しかったわよ?あ、他にも、貴女が7歳の時に、おねしょを……」

「ああっ!誰にも、バレてないと思ってたのに!分かった、認める!貴女達は、本当にこの家のお内裏様とお雛様だと!」

「ええ、分かったのなら良いの」

「でも、何で、人に成れてるの?貴女達、もとは雛人形……なん、だよね?未だに、信じられないけど」

「んー。おばぁちゃんに大切にされてるから、かも知れないわね……」

「……えーと、意味が分かんないし、文脈がまるで繋がって無いよ……?」

「あぁー。それはね……。んーと、聞いた事ないかしら。大切にされている物には魂が宿る、って。まぁ、逆も然りだけどね」

「たましいが、宿る……」

「多分私達はモノに、つまり、お雛様とお内裏様に宿った魂が何らかの力によって、具現化されたモノじゃないかしら」

「あれれ、じゃあ、少なくとも、私が10歳の時には、もう動けた、って……コト?」

「ええ。そうよ」

「凄ーい、私ずっと、怪異と住んでたって、コト?」

「失礼しちゃうわ。私達、怪異では無いのよ。それに、ヒトに成れるのは、1年で3月1日から、3月3日の3日きりなの。それを過ぎれば、私達は、雛人形の中に戻るの」

「え〜、わお。まさかのまさかの七夕方式。いや、3日だから七夕よりは、マシなのか?」

「ところで、私達行ってみたい所が有るの!!」

「行ってみたい……所?」

「春祭りよ!」

「ああ、毎年近所で、やってる……あの?」

「うん!……だめ、かしら」

「分かった、良いよ。行こう!」


ーーー


「凄っ!人が、いっぱいだ〜〜!」

「って、東京に出て来た田舎の人か!というか、この位、人間の貴様にとっては日常茶飯事だろ?」

お内裏様にいつしか、そんな事をツッこまれる。

「……貴様、じゃないよ」

「え?」

「……名前。私には名前が有るの。『弥生』って、名前が」

「そうか。……やよい、か。良い名前だな。すまん」

「2人共、何話してるの?」

「んー。……大事な話、かな?」

「んん?……まぁ、いいわ。ほら、早く行くわよ!そうじゃないと、日が暮れちゃうわ!」

そう言って、お雛様がこちらに、両の手を伸ばす。

「うん!」

「ああ!」

そう言って、私とお内裏様はお雛様の手を掴んだ。


ーーーー


「な、何だ、この珍妙な食べ物は?!」

「の、の、伸びてるですって?!」

「はーはん!見たか!伸びーる、モッツァレラチーズハットグと、トルコアイスなのだよ!!さぁ、いざに尋常に、実食ターーイム!!」

私がズイッと、食べ物を差し出すと、二人は初めはいぶかしげつつも、良い匂いに負けたのか、あるいは興味心がまさったのか、すぐに食べ始めた。

「こ、これ……!」

「「う、美味すぎる!!」」

二人の声が重なる。

「お内裏、これ、何個でも食べられるわ!!」

「ああ、雛!俺もだ!」

「ふふっ、2人共、良い食べっぷりですなぁ〜」

「ん?弥生は食べないのか?」

「ん〜?私は少食だから、2人からのお裾分けを貰うので十分だよ〜。あ。後、私には、本命がいるからね」

「ほん、めい……?」

「うん!あそこの屋台のラーメンとかき氷、とっても美味しいんだ!幼い頃、よく行ったんだよ!」

「そうなの?!行きましょう!」


ーーー


「ラーメン、美味しい……!」

「嗚呼!喉越しも良く、特性のおつゆとタレも美味しい!最高だな!」

「ふふ。懐かしいな、この味……。小さい頃を思い出す……!」

「そう言えば、幼い頃の夢って何だったの?」

お雛様が突然、聞いてくる。

「私の……?何で……?」

「私達にはない。だから、聞いてみたいなって……」

「私の夢は……。あれれ、何、だっけ?」

「え?無かったの?」

「あれれ、なんでだろ。思い、出せないや……。何だっけ……?」

「まぁ、忘れる事も、あるわよね……?」

「かき氷3つお待ちどおーー!」

店員さんが美味しそうなかき氷を運んでくる。

「うわぁ!美味しそうなかき氷!早く、食べましょう!」

「う、うん!」


ーーー


その後、輪投げや射的や金魚掬いの屋台をひとしきり、楽しむ。

「んっ〜!久びさに、楽しんだ気がする〜!」

「うう、もう、お腹が……」

「た、確かに、雛の言う通り、た、食べ過ぎた……」

「もー。雛も、お内裏様も、食べ過ぎだよ〜。というか、ラーメンとかき氷食べた後に、更に、唐揚げと焼きそばとたい焼きを食べたんでしょう?屋台、ほぼ全部回ったんじゃない?」

「うう、だって、私達一年間、何も食べれないし、動けないのよ?それを思えば、むしろ、足りないくらいよ……。ハァ。もっと、食べれば良かったわ」

「えぇー。……。でも、2人とも、今日は、ありがとう!とっても、楽しかった!」

「何を言ってるんだ、弥生。礼を言うのは、こっちの方だろ?お主の案内が無ければ、僕達はきっと、こんなに楽しむ事も出来なかったんだから」

「じゃあ、お互い様、だ。本当に、ありがとう。今日は楽しかっ……」

「や、よい……?えっ、何で」

「や、やよい……!どうしたんだ?!」

急に、お内裏様と、お雛様が叫ぶ。

「えっ?」

「身体が、透けてるわ……!」

そう、言われて自分の身体を見れば、確かに指の先がちょっとずつ消えていって、夕日の光が身体をかしていた。

「あれ……?なんで……?楽しかったのに。あっ、そっか、私……」


嗚呼。私、ーーーーーーだ。だ、だから、伝えなくちゃ、私の夢。


「2人とも、私の夢は……!」

「弥生!しっかり!」

「そうだ!まだ、食べていないモノだって、沢山……!」

2人が走って、駆け寄ってくる。ーーーーーーけれど、時間は残酷だ。進んだ時は、戻らない。私の身体は、徐々に夕日の中に溶けていく。

「やよぉぃぃぃぃぃいいい!!」

「ありが、と……。ふ、たりと……て、楽しかっ……よ。私ね、夢があったの!忘れてたけど……!看護師になって、患者さんを笑顔にすることだよ……!」

「や、やよい。喋っちゃ……!」

そんな、お雛様の声を最後に、プツン、と電源が切れるみたいに、私の意識はそこで途絶えたてしまった。


ーーーー


「弥生、どこに行っちゃったんだろう……?」

「本当に、な……。いや、もしかしたら……」

「ツッ……!そんなこと……!」

「……。弥生は、亡くなったよ。昨日の晩に、な」

「え……。どういうこと?というか、誰?」

「お主らで、間違いないな。弥生と友達として、遊んでくれた物怪は。弥生の祖母として、礼を言う。ふっ、困惑気味の様子じゃのう……」

「え……?亡くなったってどう言う事……?」

「そのまんまの意味じゃ……。弥生は重度の病に侵されておったからのう。そして、友達もほとんど、いなかったからのう……」

「でも、でも……!!昨日はあんなに、元気だったのに……」

「嗚呼。その事については簡単な話じゃ。お主らは、物に魂が宿って形をす、わゆる、物怪もののふじゃ。弥生は……謂わば、その逆じゃな。人の心には魂が宿る。魂だけが身体から抜け出して、私の家に帰ってきた所、お主らに出会った、という所じゃろう。当然、物怪は一般人には見えない。だが、死が近く、体からすり抜けた魂の状態であれば、話は別じゃ」

「な、なるほど」

「まぁ、お主らには、感謝しなければのぅ……。雑魚怪異も、偶には役に立つというモノじゃ……」

「か、怪異って!失礼しちゃうわね!」

「まぁ、お主らは、怪異ですらなく、物怪だしのぅ……」

「むぅ……。……でも、これでハッキリしたわ。弥生には、もう会えないって、事が……!」

「何を言うとる。弥生はお主らの中に生きている。お主らが、雛人形の方の身体に戻っとらんのが、その確たる証拠じゃ。恐らくは、無意識の内に、弥生が自らの魂の一部をお主らに与えたのだろう」

「じゃあ、今日って……!」

「3月5日、じゃよ」

「ウソ……。……。……だったら、弥生がくれたこの命、弥生の夢のために使いたい!!」

「ボクもだ……!」

「お主らが、人を襲わんという証拠は?」

「「殺(せ)して」」

2人の声がまたもや、重なる。

「ふんっ、分かった。もし、お前達が暴走したり道を踏み外す事があれば、一瞬で、あの世にかせてやる」

「あ、ありがとう……!だって……弥生は絶対そんな事望んでないもの」

「ああ。弥生はそんな事望んでない。恩に切る」

「ハァ……。物怪、二人に礼を言われた所でのう……」

「じゃあ、弥生の夢を叶える為に、特訓といくわよ!」

「えっ、雛?!ちょっ、どこへ行くんだ?!」

「夕日に向かって、走るのよ!ほら、早く!!」

「ええっっー?!」

二人は、夕日へ向かって、走り出す。

「まぁ、これから賑やかになりそうじゃのぉ……。弥生、良かったな。お前の夢は、どうやら繋がった様じゃ。そして、私がこの先、居なくなっても、お主の事を覚えておる誰かがおる……ふっ。もうちょっとで、そっちに行くから、もう少しの辛抱じゃ……。のぉ、弥生」

夕日が沈む中、泣き崩れる祖母の声と姿が、お内裏様とお雛様が走る姿が、人々の日常が、今日が、夜と夕日の間に全てが溶けていく。

                                  (了)

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