もしも、自分の在り方に悩んだら……人工知能と演劇を描く青春物語!
- ★★★ Excellent!!!
幼い頃、事故により意識不明の重体に陥った鈴宮柚葉は、大半が機能停止した脳に人工知能チップを埋め込むことで一命を取りとめた。
成長し、高校2年生となった柚葉。
特に勉強しなくても成績はトップだが、その知識量とは裏腹に国語の文章問題は苦手だ。ハッキリとした答えのない問題はとくに分かりづらい。
柚葉は悩む。自分はやはり、人工知能によって動いているのではないか……。
先生の勧めで本を読むことにした柚葉は図書館に向かう。そこで、演劇の脚本を書いていた千早拓哉と出会ったことがきっかけで、演劇部の舞台を見に行くに。
その舞台で演じられた世界や久遠紗良の演技に感動し、心が動くのを感じた柚葉は、その感覚に導かれるように演劇部への入部を決意したのであった。
本当の自分とは何なのか……このような悩みを抱いた方々には、主人公・鈴宮柚葉の苦悩にきっと共感されることと思います。
そういう点では、本作は普遍的な青春物語だと言えます。
しかし、人工知能か「私」か、という二択は極めてSF的な問題であります。
SFの文脈ではP・K・ディック的なスリラー向きで描かれやすいテーマですが、ド直球な青春物語として瑞々しいタッチで描き切っているところに、本作でしか味わえない唯一無二の世界観を感じました!
そして、本作を通して、人工知能のように膨大データとそこから割り出される予測を通して生きていく「私」ではなく、新しい何かと出会い、感動して心をふるわせる「私」を選ぶこと……人生にとって大切な選択を教えていただきました!