二人でのラストライブ!!!

向夏夜なくの

楽しい、楽しい、ひなまつり!

「皆さん、次が本日のライブ。最後の曲です!」

「「「うぉおおおおお!!!」」」


狭い箱に地鳴りのように響く声援が、私の体を、心を、震わせる。


私の口は歌う為に、体は踊る為だけにあると、皆が教えてくれているみたいだ。


「聴いてください!――『私一人、楽しいひなまつり!』」


――ジャンジャンジャーン♫♪♬ 


三月三日。それは、毎年欠かさずに公演している周年ライブの日。会場の地下ライブハウスは通称、仕丁しちょうと呼ぶファンで埋め尽くされていた。


仕丁しちょうとは、ひな壇での雑用係を意味する。私がそう呼ぶことに決めたけれど、我ながら酷い呼び名だ。


今や全盛期からは程遠いキャパの箱ではあるけれど、仕丁しちょうの質も相まって、盛り上がりっぷりは他のアイドルに比肩するものは無いと自負している。


「お殿様が居なくても♪♬」


私の所属するガールズバンド『ひなまつり』は元々十二人のグループだった。けれど、メンバーは年々脱退を続けている。


先ずは、五人囃子の五人が一斉に脱退。その翌々年には三人官女の三人が、その翌年にはお殿様がグループを去った。


その後も色々あって。今や、お雛様である私と右大臣の二人だけになってしまった。


そして今日、その右大臣も脱退する。


――右大臣の超絶ギターソロ🎶🎶


ああ……

この耳にタコが出来るくらいに聴いてきた演奏も今日で最後か。


いつ聴いてもカッコ良くて、私も自然と声に力が入る。


「――私一人!楽しいひなまつり!♬」


明日からは、私一人でやっていくよ。

右大臣はこれからも応援してくれるよね?


――ギュインギューン!キュイ!


レスポールで答えるって?

私も負けてられないな笑


右大臣が結婚するって聞いた時は、本当に驚いたよ。私達だけは、いつまでも一緒に活動できるって思っていたから。


でも、大丈夫。

私一人でも『ひなまつり』は続けるから!


「――右大臣が居なくても♪♬」


君の奏でる音、訴える目、私の声との調和、リズム感、私がジャケ買いしたエフェクター使ってくれてる所も。


ああ、もう!

全部引っくるめて、私は君が大好きだ!


「――せーのっ!」

「「「私一人!楽しいひなまつりい!♬」」」


――ギュイィィン!!!


「みんな、ありがとーー!!」



これからも私、頑張るから!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二人でのラストライブ!!! 向夏夜なくの @kanaya_nakuno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画