【KAC20251】映画研究部(非公式)の日常 〜ヒナ祭り(タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ)編〜

❄️風宮 翠霞❄️

タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ

《うす。トリの降臨だ、崇めよ》


 あだ名がトリちゃんの私……おおとり鳥季ちょうきは、いつもの台詞を心の中で言いつつ視聴覚室の扉を開けた。


《お〜っ。やっほ、トリちゃん。俺の隣、空いてるぜ》


 視聴覚室の最後列、一番扉に近い席に座ってスチャッと手を上げた同級生の彼––––いぬいけんと私は人の考えを読める超能力者エスパーだから、声には出さない。


 今の挨拶も、無音で成立した。

 エスパーは二人いるとできることが増えるので、超絶お得だと思う。


 例えば……。


《今日聞いたんだけどさ、人間って竹輪ちくわと構造一緒らしい》


「ピヨピヨ」


《何それ、ウケる》


「ピピッ、ピヨ」


《それな〜? というか、この世から小テストなくなれ》


《わかる。まじそれな》


 ピヨピヨという鳴き声が響く視聴覚室で、前方に座ってピヨピヨ言う映画を見る男女の同級生二人の後ろで、静かに無駄話をしたりとか。


 くだらない?

 JK女子高生DK男子高校生が超能力使うのなんて、大抵はそんなもんだって(偏見)。


「ピヨッ」


《……音駒ねこまっちと雨島さめじまっち、今日は何見てんの?》


 思考の合間に耳に入り込む音が気になり、私はついにそう訊く。


 今ここはエスパーの私と健、そして無表情な変人だけどただの映画好きな音駒真依まいと雨島海兎かいとの四人が映画研究部を名乗って、鍵管理担当の先生を説得してジャックしている。


 ……人数が足りなくて正式な部活とは認められてないけど、まぁそんな訳で私達は自由に活動してるので、今流れている映画は二人が選んで見ているものだろう。


《「ヒナ祭り」っていう映画らしい。主人公が一番可愛い鳥のヒナを決めようとするけど、結局全部可愛くて決められないって話だとさ》


《……なにそれ》


 健の言葉を聞いて浮かんだ「つまんなそう」という言葉は心の声にも乗せずに直前で飲み込む。


《何が面白いかよく分からないけど、二人とも楽しそうよな》


 健が、前で仲良く肩を並べて映画を見る音駒ねこまっちと雨島さめじまっちを満面の笑みで見守ってたから。

 普段無表情な二人が、心なしか柔らかい表情で映画を見てるから。


 私も、黙って映画を見ることにした。


《健、タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフって知ってる?》


《……は?》


 黙ったまま心の声で、健をからかいながら。

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