生きるための『普通』とはなんなのか。少年が直面する真実とは?
- ★★★ Excellent!!!
抗いがたい血や本能。「生物」や「種」としての悲しさ。本作のテーマを読み進めていくと、そんな言葉が浮かんできました。
アンディは「成人」の旅立ちとして、父親からロープとナイフを受け取る。なんのためのものかは理解できないまま、新しい町で生活を始めようとする。
しかし、順調に見えた日々の先で、アンディは突如「殺人」を犯してしまう。
自分を誘惑してきた娼婦に対し、なぜか腹部にナイフを突き立てる。
一体なぜ、そんなことをしてしまったのか?
戸惑いながら元の村へと帰って行くアンディ。殺人の罪を誰かに裁かれるのではないかと怯えるが、やがて彼は「真実」を知ることになる。
不条理な出来事が起こり、「彼は一体何者なのか?」、「彼の身に何が起きたのか?」と読者は疑問を抱くようになります。
そして、最後に明かされる真実を見て、「だから、あの時にあんな行動を」と納得することに。
本人たちも知らなかった、自分たちの「ルーツ」とでもいうもの。この作品のジャンルがホラーであること、そして、「水辺の村」が舞台であることなどが強く思い出させられます。
「生物としての宿命」とでもいうべきもの。それは生まれた時から決まっていたもので、抗うことはできない。それをまっとうすることこそが、自分たちの「命」としての正しい帰結なのかもしれない。
感情の入り込む余地の許さない絶対的な摂理。それと直面するアンディの姿に、強いカタルシスを覚えさせられました。