想像を超えた結末に、衝撃を受けた。
10歳になったら村の外に出て、一年後そこに留まるか村に帰るかは本人の意思によるが、殆どの者が村に戻るという因習のある村の、アンディという若者の話。
親から贈られたナイフと5本の革紐を懐に入れ、アンディは港の近くの街に行き、鯨の解体の仕事に就く。
まもなく一年が過ぎようとしたある日、酒場で仕事仲間に娼婦のメイヴを紹介される。10歳で娼婦⁈ という疑問は当然湧くだろう。
最後までこのお話の世界観に気づかなかったので衝撃を受けたが、その世界での生の存続、命の円環を紡ぐ儀式なのだと分かった時、何故か納得感を覚えた。
これはいい作品です。素晴らしいです。
ホラーのようで純文学的な色合いもあります。
成長の速度が2倍も速いある村で成人し(だから10歳)、港町で働き始めた主人公のアンディ。1年後に村に帰り、同じく村を出たマーサと結婚することを夢に見ています。そのアンディの前に現れた魅力的な娼婦、メイヴ。そこで突如悲劇が起こります。
村の隠された因習、それに支配された青年の本能。
それを理解している街の協力者たち。
命を繋ぐ者たちの思いが行間から伝わってきます。
語彙力がなくて、上手く表現できないのですけれども、これは相当に優れた作品であると、素直に思いました。
得るところのあるお話だと思います。
文章の書き方も素直で、読みやすいです。
是非お読みになって下さい。
抗いがたい血や本能。「生物」や「種」としての悲しさ。本作のテーマを読み進めていくと、そんな言葉が浮かんできました。
アンディは「成人」の旅立ちとして、父親からロープとナイフを受け取る。なんのためのものかは理解できないまま、新しい町で生活を始めようとする。
しかし、順調に見えた日々の先で、アンディは突如「殺人」を犯してしまう。
自分を誘惑してきた娼婦に対し、なぜか腹部にナイフを突き立てる。
一体なぜ、そんなことをしてしまったのか?
戸惑いながら元の村へと帰って行くアンディ。殺人の罪を誰かに裁かれるのではないかと怯えるが、やがて彼は「真実」を知ることになる。
不条理な出来事が起こり、「彼は一体何者なのか?」、「彼の身に何が起きたのか?」と読者は疑問を抱くようになります。
そして、最後に明かされる真実を見て、「だから、あの時にあんな行動を」と納得することに。
本人たちも知らなかった、自分たちの「ルーツ」とでもいうもの。この作品のジャンルがホラーであること、そして、「水辺の村」が舞台であることなどが強く思い出させられます。
「生物としての宿命」とでもいうべきもの。それは生まれた時から決まっていたもので、抗うことはできない。それをまっとうすることこそが、自分たちの「命」としての正しい帰結なのかもしれない。
感情の入り込む余地の許さない絶対的な摂理。それと直面するアンディの姿に、強いカタルシスを覚えさせられました。