わたしのアイドル。

アルゴン。

1.

小学3年。ある日突然、僕は恋に落ちる。


好きになった彼女はテレビのブラウン管の中で光り輝いていた。


当時の僕は姉2人と姉の持つ少女漫画に囲まれて育っていたので、恋愛に対して早熟だった。

そして、漫画に出てくる男性の真似をしていたらいつの間にか小学校のアイドルになっていた。


男の子は僕と一緒に遊びたがり。

女の子はバレンタインデーになると、わざわざ僕の家までチョコを手渡しするために大挙して列をなした。


件(くだん)の女性に初めて出会ったのは、彼女がヒロインを演じている映画だった。


目を奪われた。

耳を犯された。

心を盗まれた。


そして、全身が歓喜に震えた。


こんなに素晴らしい女性が日本には、世界にはいるんだ。


次の日。

僕は小学校のアイドルを辞めた。


だって、本物を観てしまったから。

偽物であることがすごく恥ずかしかった。


そして、僕はクラスの人気者から目立たない一般人になった。


それからも、僕は彼女を見かけるたびに応援した。


別にファンクラブに入るわけじゃない。

友人に勧めることもしなかった。

ただただ、心の中で応援した。


だって、彼女は僕だけのアイドルだったから。


「いつも応援して観ています。」


ただ、それだけ。


時が経ち、僕はおじさんと言われる年齢になり、いつのまにか私になった。


先日、彼女が高校生くらいの娘さんを持った母親役をやっているTVコマーシャルを見た。

彼女の色褪せない素敵な笑顔に、私も笑顔になった。


ああ、アイドルっていいな。


私は彼女がこの世界から無くなっても、崇拝しつづけるだろう。


だって、彼女は僕にとって唯一無二のIdol(アイドル)なんだから。

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わたしのアイドル。 アルゴン。 @argon0602

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