呪い

青切 吉十

呪い

 その国では、美しい男の子が生まれると、母親はしくしくと泣きました。なぜなら、東の森から美しい魔女がやってきて、男の子をさらっていってしまうからです。

 魔女のまえでは、王さまの軍隊さえ、防ぐことができませんでした。


 魔女の城に連れられた男の子は、魔女の手で育てられます。美しさに磨きをかけて、魔女の恋人にするためです。

 やがて、男の子が美しい青年になると、二人きりの甘い生活を魔女は楽しみます。


 しかし、しかしです。いつも、いつもそうなのです。

 魔女はやがて、お腹が空いて、どうしても青年を食べたくなってしまうのです。

 愛していれば愛しているほど、大切に思っていれば大切に思っているほど、どうしても若者を食べたくなってしまうのです。

 同じことを繰り返していてはいけないと、魔女も我慢はします。今まで食べてしまった男たちの顔が魔女の脳裏に浮かびます。しかし、いつも耐えることができずに、魔女は恋人を魔法で豚に変えてしまいます。

 そして、丸々と太った美しい豚を自らの手で屠り、ごちそうをこさえます。


 冷酷で傲慢な魔女もこのときばかりはしおらしくなり、しくしくと泣きます。泣きながら、夢中でごちそうを食べます。

 泣けば泣くほど、食べれば食べるほど、魔女は若返り、美しくなっていきます。

 そして、食べ終わると、自分にふさわしい恋人がいないことに魔女は気がつきます。食べてしまった恋人のことはけろりと忘れて。

 それから魔女は、腹ごなしに、新しい男の子を探しに出かけます。

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呪い 青切 吉十 @aogiri

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