黒い対話

stdn0316

第1話

 子どもの頃ある育成ゲームをやっていた。

 タマゴから育てたモンスターを何体か編成したチームで相手チームと戦わせるゲームだ。


 マス目状に区切られたステージ上でモンスターを動かし、相手チームの殲滅を目指す。シミュレーションゲームだったと記憶している。


 モンスターごとに個性のあるステータスをしており、それぞれの特徴を活かした戦略を練るのが楽しいゲームだった。


 しかし、そのゲームは途中で辞めてしまった。

 珍しいバグだったのか、製作者が悪ふざけで忍ばせた隠し要素だったのかは分からない。


 あるモンスターのタマゴを孵化させた時だった。本来存在するはずのない見た目のモンスターが生まれた。


 それは黒い棒人間の外見をしていた。

 その他のモンスターは皆動物に似ていたり、架空の生物のデザインであってもそれなりに愛らしい見た目をしていた。


 モンスターに対しては通常、鳴き声を発する程度のコミュニケーションしか発生しない。

 しかし棒人間は明確にこちらに話しかけてきていた。


「おはよう」

「後ろみて後ろ」

「楽しみだなあ」

「このセーブデータはそろそろ壊れます」

「ねえ〇〇くん、いつ交代す」


 最後のセリフを終える前に電源を切った。

 その後そのゲームは捨て、セーブデータが壊れたかどうかの確認もしなかった。


 棒人間のステータスは、知力と体力がゲームの限界値を超えた数値になっていた。


 そして彼が呼んだ〇〇くんとは、自分の本名であった。







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