チョピンコンクール

ピアノ

「これって、うちのクラスのことじゃね？」

SNSのおすすめ欄に、体育の授業での出来事っぽい投稿が流れてきた。

昨日、体育で男女の混合バレーをしたが、女子がサーブを全然返せなくて、はっきり言ってつまらなかった。

それと同じことが昨日の日時で書かれていて、

『フォローするのがクソだるかった』

と、続きがある。

……そういえば、クラスメイトの高木だけが、「皆でやれて楽しかった！」と、汗を拭きながら笑顔で言ってたな。

そのアカウントをスクロールすると、

『女はサイコパスでテイカー』『女さんの知能指数』『雌に人権を与えるな』『子宮で呼吸している方の性別』という投稿ばかりだった。

こういうの、よく見るけれど、ここまでハードコアとは。私は思わず爆笑した。

高木はクラスのイケメンだ。

成績も良くて、ピアノが弾ける。

気が利くし、誰に対しても優しい。

そんな高木が、ネットでは匿名で毒を吐いている。

「ピアノなんて、洒落臭いだけだと思ってた」

正直、全く興味がなかった。

文化祭の合唱の伴奏をしているのを、流し聞きしてただけだ。

しかし今、あいつがどんな音を奏でるのか、ものすごく聴きたくなっている。

Y!Tubeに高木の実名を入れると、すぐに見つかった。

サムネイルには、ピアノの前に座る見知った横顔。

チョピンCompetitionって書いてある。チョピンって何だ？

再生ボタンを押すと、動画は読み込みを始めた。

————やめておこう。

タブをスワイプして消し、アプリを閉じた。

ピアノに興味なんてない。ただ高木の裏の顔が見たいだけだ。

それをピアノを通して確認するなんて悪趣味だし、

第一、高木に対してなんか悪い気がした。

明日も、高木は優しく微笑みながら、クラスの奴らと喋る。

そしてネットでは、また新しい投稿を重ねていくのだろう。