第一句の補足と小噺

柊先生の句の解説☆

「あやめ」は夏の季語。「月も欠けなし」は、かの有名な「この世をば わがよとぞ思う 望月の 欠けたることも なしと思へば」(うろ覚えすまん)から取ってきてます。満足であるだとか、そんな意味。「可惜夜」は、明けてほしくない夜のこと。颯への恋心を込めた、少し過去を振り返るような句に仕上げました。


颯の句の解説☆

颯の句のポイントは、とにかく対比が多いこと。「下弦の月」は三日月のこと。先生は満月、颯は三日月。「夜夜中」は夜中を強調する言い方。先生は最後に「叶えと願う」とポジティブに終わらせていましたが、颯は「後悔ひとつ」と、ネガティブです。先生への恋心を込めた、諦めと後悔の句に仕上げました。


最後の句の解説☆

「送り梅雨」は、夏の終わりの季語。時が経っていることを表現。二人とも、句に夢のことを書いているところから「貴方なくして 夢は見られず」としました。悲しい夢も嬉しい夢も、あなた無しでは見られないのですよ、という意味を込めた、二人の今後を想起させるような句に仕上げました。




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「いや〜まさか先生の方から飲みに誘ってくれるなんて思ってませんでしたよ!」

「何も気にせず誘ってしまいましたが…ご家族とか、大丈夫ですか?」

「うちの奥さんは先生のファンなので大丈夫です!『早く行ってこい』って蹴り飛ばされたくらいですよ!」

「なんかすいません…」


やけ酒。自分らしくないなと思う。でもこのくらいしないと忘れられそうになかったのだ。あの返歌が、頭にこびり付いて離れない。





「20歳になった瞬間に飲みに行こうとか…お前、意外とこういうとこは馬鹿だよな。」

「うるさい。」

「まぁ俺も飲みたかったしいいけど。」

「どうせ柊和麻のことだろ?もういい加減忘れろって。」

「そんな簡単に忘れられるならそうしてるわ!」


裕樹に誘われて、珍しく居酒屋へ。酒、そんなに得意じゃないけど。…先生の句が、頭から離れない。





「歩けます?」

「まだまだ行けますよ〜!」

「…もうやめときましょうか。」


帰り道。残暑。夜はまだ暑い。




「ほら、裕樹。」

「は?二軒目だろ。」

「行かねぇよ。」


帰り道。残暑。暑さが気持ち悪い。




一瞬だった。ただの、すれ違い。なのに、



「柊、先生?」

「……?」


知らない人に声をかけられることは今までにもあった。お渡し会などの写真はネットに出回るし、私のファンであれば実際会ったことのある人もいる。でも今回は、何か違う気がした。


「な〜んだ、相手は女かと思ったら男かよ。可哀想な颯。」

「は、やめろ裕樹、」


「ファンの方ですか〜?あ、それとも、あなたが噂の?」

「…佐々木、」



目が合って。お互いにすぐ、逸らした。生ぬるい風が気持ち悪くて仕方ない。


初めての出会いは、あまりにも最悪だった。

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