違う!違う!そうじゃない。

もっちゃん(元貴)

第1話 平等な世界

朝、ベッドの上で目を覚ますと、目の前の空間にタッチパネル画面がでていた。



  【ようこそ!アナザーワールドへ】



  あなたは、この世界へ入場しますか? 



      はい    いいえ



まだ、起きたばかりで、このよくわからない突然の出来事に理解が追いついていなかった俺は、とりあえず、『はい』を押してしまったのだった。


        ーピッ


 「えっ!?急になに、なに?」


 急に目の前が暗転したと思えば、次の瞬間には、いつもと同じ自分の部屋のベッドの上にいた。


 「あれ?何にも変わってない?」

 

 ベットから起き上がり、自分の部屋をくまなくみてみるが、特段変わったところはないようだ。


 時計を見てみると、10時10分…


 10時10分!?遅刻じゃん!と思ったが、よく見ると時計の針の位置がおかしい。


 なぜなら、時計に書いてある数字が全部10だからだ。通常の1から12の数字に当てはめると今は、6時30分ということになる。


 どういうことだろうか?とりあえず寝室を出てリビングに行ってみよう。


 ーガチャ

  

 リビングの変わったところを探してみる。



 ん?カレンダーもおかしいな。今月は1月なのに10月になっている。一枚めくって来月が11月なのかをみるが、来月も10月になっている!もう一枚めくるが再来月も10月だ。


 なんなんだ!この世界、おかしすぎる!


 情報がほしいと思って、机にあったリモコンを手に取る。


 ってあれ?リモコンに書いてある数字が全部10だけになっている。

 

 全部の10を押してみるが、全て放送してるのは10チャンネルのみだ。

 放送してるのは、いたって普通の朝番組だった。


 いけない。そろそろ出社の時間だ。時間がないので、朝ごはんは食べずに、家を出たのだった。


 会社に向かう途中に、車を販売している店の前を通ったが、新車の値段も全部衝撃の10円だった。

 やはり、この世界は以前いた世界とは違うようだ。


 自宅の最寄りの駅から、電車に乗り会社近くの駅に降りた。


 交差点で信号待ちをしていたら、駅ビルに設置されている大型ビジョンをふとみると、ニュースが流れていた。


         

    こちら、中継先の佐々木です。


 いま、新宿駅前にいるのですが、全ての働いている人の給料は、地位に関わらず毎月一律10万のみの法律が施行されて今日で丸一年になりました。最初は不安の声が大きかったですが、ご覧の通り、皆様通常通りの生活を送っているようです。


 

       「はぁ!?」


 思わず、大きな声を出してしまった。

 

 辺りにいた人がみんな俺のほうを見ている。


 「すみません。大きな声出しちゃって」


 頭を下げながら、その場を離れた。

 

 おかしいだろ?月10万ということは、年収120万じゃないか!そんな賃金で社会が回るはずがないだろうが!


 なんなんだ!この世界、おかしすぎる!


 あれ?デジャヴ?


 まっ、いいか。とにかく仕事をしないと、勤めている会社があるビルは、元いた世界と同じ場所にあった。このあたりは、元の世界と変わってないようだ。


 その後、同僚も先輩も変わらず存在していたので、話をしてみたら、この世界がおかしな世界だとはどうやら思っていないようだった。


 ということは、最初タッチパネルに出ていたアナザーワールド、いわゆる並行世界ということなんだろう。


 違和感を感じながら、元の世界と同じように自分の仕事をしていたら、いつの間にか昼になっていた。

 

  ぐぅー


 おっと!お腹の虫が鳴りやがった。そう言えば朝ごはん食べてなかったんだった!


 昼休憩中に昼ごはんを買うために、コンビニに入ったのだが、値段設定がおかしかった。


   全商品全て10円だったのだ!


 おにぎりも、弁当も、冷凍食品も、何もかも!!逆に安すぎて買うのが怖い!


 しかし、お腹が空いていた俺は、おにぎりとペットボトルのお茶を買うため財布をカバンから取り出す。


 財布の中を開くと10円玉数枚しかお金が入ってなかった。


 本当に、10円で商品が買えるのか甚だ疑問でしかないが、店員に20円を払う。


 「はい、20円頂戴いたしました!ありがとうございました」


 

 なんと!20円で本当に買えたのだった。


 マイバッグに、おにぎりとお茶を入れてコンビニを後にした。

 会社の中で、買ったおにぎりを食べたが美味しかったし、お茶も変な味はしなかった。



 その後、仕事を終え、帰り道にスーパーにも、入ってみたが、案の定全品10円だった。1番衝撃だったのは、米10キロの値段が10円だった。


 ヤバすぎる!この世界の貨幣価値は一体どうなっているんだ!

 絶対俺は夢の中にいるに違いない!ほっぺをつねってみるが痛い!どうやら現実のようだ。


 確かに、物の値段は激安なのは嬉しいことは嬉しいのだが、時間も今何時なのかよくわからないし、毎年10月が一年続いていく。そうなると、季節も秋だけかもしれない。もしここに長居すると元の世界に戻ったときに通常生活が当分の間、難しくなるだろう。そんな異様な世界なんだ。ここは!



 自宅に戻ると、異様な世界にいるからか心身疲労がたまっていたらしく、スーツのままでベットに倒れた。


 「はぁー、疲れたー!食欲もないし、寝ようかな」


 だんだん眠くなり、目を閉じようとしたところ、また目の前の空間にタッチパネル画面が出てきた。



  あなたは、この世界に居続けますか?



     はい      いいえ


         


   もちろん答えは決まっている!



        こっちだ!



        ーピッ



 ???「また1人、わしが作った世界から消えていったか、彼らは、平等な世界を好むと聞いたから、試しに数字が平等な世界を作ってみたが、やはりわしには、まだ人間の考え方はわからぬままじゃな」

         

          終

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