他所の小説を読んでいてこんな経験をしたことはないですか?
『完全無欠なチート主人公のはずなのに、突然知能が下がって油断や慢心や舐めプをして自分や仲間をピンチに陥れるのはなんだろう。多分そこからの逆転勝利っていう演出のためなんだろうけど、なんかモニョるな……』
安心してください。この小説にはそんな不安は一切ありません。
小説の概要としては『ゲーム世界の主人公に異世界転生した三十路の男が知識無双して魔王を倒そうとする』というものなのですが、この主人公、油断も慢心も舐めプもしません。
初手からして『現代一般サラリーマンの価値観や感性では原作通りの魔王退治なんて無理だから、出来そうな奴に押し付けて自分はサポートに徹そう』という潔さ。
そして漫然と生きてタイミングを待つのではなく、自分から進んで目的に向けて行動する積極性。
これらの方向性は日々の生き方から一つ一つの戦闘にまで及んでおり、とても安心して主人公の行動を眺めていることができます。
まだ物語は半ばですが、この主人公の性質は変わることなく最後までいくんじゃないかと思っています。なぜならこの作者さんの前作の主人公もこんな感じの質でしたし、それで最後まで突き抜けましたから。
今のところ最も更新が楽しみな作品の一つです。
名作ゲームに二人いる主人公のうち、片方に転生したが、面倒だから魔王を倒したくはない。でも経験値は稼ぎたい。そうやって、もう一人の主人公たるダークヒーローにすべてを丸投げするため、原作を破壊していく痛快な冒険譚。
目的は丸投げとはいえ、徐々に強くなっていく様子は王道でワクワクするし、どんどん盛られていく主人公の過去、というか、おばあちゃんの設定に笑ってしまう。ダンジョン自体にも好感度が設定されているなどの設定も面白く、ゲームの設定についても興味がわいてくる。
目的のためにドンドンやらかして、主人公が注目され、設定過多キャラ扱い・変人扱いされていく様子をぜひ楽しんでほしい。