夢日記

辰砂

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「りお〜、帰りカラオケ行かない〜?」

「んーーー、今日はパス」

「え!?なんでなんでなんで」

「うるさーい、ちょっと色々あるんです〜」

「…………彼氏か?「なわけ」

「ちょっと家のことしようと思って」

「え、えらい。けど、大丈夫?」

「何が?」

「ほら、りおって色々抱え込むタイプだし〜〜頼って欲しいな〜〜、なんて」

「別に抱え込んでないよ、ただちょっと……」

「ちょっと?」

「……最近さ、お母さんの様子がおかしいの」

「え、なんで?」

「話長くなるけど、カラオケ大丈夫?」

「もうカラオケの気分じゃないから大丈夫」

「話聞く気満々だ……」

「続きはよ」

「はいはい……ほら、私の家立て続けにじいちゃんとばあちゃんが亡くなったでしょ?」

「うんうん」

「それでね、ばあちゃんの49日は私の家でしたの。ばあちゃんとじいちゃんの家は直ぐに売り払ってたし」

「お疲れさまでございました」

「全然、そこらへんは叔父さんとかが全部やってくれたし。でね、私は制服着て出席してたんだけど、靴下に穴が空いててさ、慌てて2階の洋服タンスのある部屋に行ったの」

「いつもは気にしないくせに笑」

「流石に49日にそのスタンスは駄目でしょ笑で、私の家って洋服タンスは自分専用のはなくて、家族全員が使うやつなの。だから、その部屋は共用部屋って感じだったんだけど、鏡があるの、大きな姿見」

「なるほど、つまり家族全員の衣装ルームってことだね」

「ああ、そうそう、そんな感じ。でね、鏡はドアを開けたら直ぐに見える位置にあるんだけど……あの、前提からして私別に視える人ではないんだけど」

「え、待って、この話ホラー?」

「うん、ばりばりのホラー」

「面白くなってきましたーー!!」

「あ、ごめんやっぱ嘘、ばりばりではない。ちょい怖」

「え〜〜〜」

「そんなあからさまにテンション下げないでよ……」

「ちなみにオチは?」

「最後まで話聞いて」

「はーい。で、鏡に幽霊が出てなんだっけ?」

「出てない出てない、鏡に幽霊は映ってない」

「あの流れで!?」

「うるさーい、鏡には幽霊なんて映ってなかったけど……ばあちゃんがさ、居た気がしたの」

「あの仏のばあさまが?」

「何その異名」

「え〜知らないの?近所では有名だったよ、仏様みたいに掌で人をコロコロするようなおばあさんだって」

「それ褒めてる?」

「褒めてるし〜、現にお葬式なんて豪華散乱だったじゃん。何処の著名人が亡くなったんだってレベルだったし」

「豪華絢爛だよ、散乱してどーする笑」

「日本語ってむつかしーよね……」

「まあ、確かにばあちゃんは仏様みたいな人だったよ。じいちゃんの面倒を最期まで見てくれたし」

「そんなばあちゃんの気配が、衣装ルームから……ペロ、これは事件の香り……」

「行動と言動が合ってないんだよな……舐めて香りを確かめる探偵なんていないし」

「あ!分かった。ばあちゃんはりおのこと心配だったんだよ、それで黄泉の国から舞い戻ってきた!!」

「……正直、ちょっと思った。けどさ、ばあちゃんの気配がするって思って……なんかさ、なんでか分かんないんだど、鏡の裏を見たんだよ」

「鏡の裏にばあちゃんが……!?」

「いませーん…………あったのは日記」

「日記?ばあちゃんの?」

「いや、ばあちゃんの日記は読まずに処分した、ほら、日記ってその人が死んだ後に読むものではないし」

「確かに、そこ勘違いしてる人多いよね。日記しかり同人誌しかりスマホしかり、自分が死んだらしっかりとお焚き上げして貰わないと」

「スマホは駄目でしょ笑」

「スマホが1番家族に見られたくないよう……」

「その気持ちは分かる。まあ、結局のところ私もその日記見なかったんだけどね……なんか、見たらいけないって思った」

「見てはいけない、じゃなくって見たらいけない、か……見たら死ぬ呪いのビデオ的な感じ?」

「そー……なのか?なんか違う気もするけど……けど、多分なんだけど、ばーちゃんはあの日記について、何かを訴えたかったんじゃないかな〜って思ったのよ」

「うんうん。だってらしからぬ行動だもんね、りおん家のばーちゃんって、そんな人が怖がるようなことなんて絶対しなかったし」

「仏のばあさまなので……けど確かに、ばあちゃんらしくないなとは思った」

「なんかさ、私の勝手なイメージとしては三途の川の水面を眺めて下界を見守ってる気がする……やっぱ仏じゃねーか」

「……最期に、蓮の花の上で釣りしたいって言ってたな」

「言ってそ〜〜てかしてそ〜〜」

「私、あんたのその空気読まないとこ大好き」

「ありがと♡で、その話とお母さんに何の因果関係か?」

「因果まではいかないけど、49日が終わった後、お母さんに聞いたんだよ。あの部屋にあった日記、誰のか知ってる?って」

「うんうん」

「そしたらさ『ああ、あれ私のよ。夢日記』「待ってお母さんの真似うま過ぎない?」「私のお母さんなんて知らんでしょ笑適当なこと言うな」

「すいまめーん………ん、夢日記って何?将来の夢を書き記す的な奴?人生でしたい100のこと的な」

「私もそう思った、けど違った。夢日記って、寝てる時にみる夢を書いた日記なんだって」

「ほへぇ……知らなかった」

「いや、うちの母さんがそう命名しただけだから。でね、私が何の夢みてるの?って聞いたら『毎日ばあちゃんの夢をみるの』だって」

「え、夢ってそんな毎日みるもん?」

「普通はみないよねぇ」

「調べてみるわ……何々、レム睡眠が長くて脳が休んでいない、活動力の低下、悪夢障害」

「いや、それがむしろ逆なんだよ、なんかさ、めっちゃ元気になっているって言うか……」

「なら良いじゃん」

「けどなんか、様子が変って言うか……空元気?んー、違う……元気なんだけど、目元の隈がひどいし、テンション高い空元気というか……」

「あれか、躁っぽい」

「それそれそれそれ」

「病院行った方が良くね?」

「やっぱそう思う??」

「思う思う、あれだ。PTSD」

「なんか違う気がする」

「けどほら、じいちゃんとばあちゃんが最近立て続けに亡くなってるし」

「じいちゃんは関係ないと思う……お母さん、最期まで病院に来なかったし」

「ほなばあちゃんか〜〜」

「けど、未成年の娘に病院行けって言われるの親の立場的にどう?」

「まだ子ども産んでないから分かんない」

「やっぱ嫌だよね…………」

「会話が成立してない」

「何処に相談すべき?児相?」

「絶対に違うと思う」

「親戚とかには頼れないし、内々で解決したいんだよ〜」

「父ちゃんは?」

「別居、おそらく私が高校卒業した瞬間離婚」

「親権は〜〜〜」

「Mother〜〜〜」

「「yeah!!」」

「あんたそんなんだから嫌われるんだよ」

「お互い様〜〜」

「まあ、そんな感じで今我が家は大変なんだよ、だからカラオケには行きません」

「一難去ってまた一難だねぇ」

「本当にね……まあ、何とかなるよ、うん。何とかなる何とかなる」

「本当に辛い時は私の家に逃げて来い」

「いや無理、あんたの親スピってるし」

「高校卒業したら一緒に上京しような……」

「はいはい」

「じゃ、私もう帰るわ。またカラオケ行こ」

「約束だからね!!絶対だからね!!」

「分かった分かった、じゃーねーー!!」

「じゃーねーーーー!!!……あ」

「?……どうしたの?」

「なんか閃いた気がする」

「何を???」

「らしからぬ行動をしてまで、りおに夢日記について訴えたばあちゃん、毎日ばあちゃんの夢を見るりおのお母さん、日に日におかしくなっているりおのお母さん……」

「何々急に、怖いんだけど笑」







 






 


「……夢の中にいるばあちゃんは、本当のばあちゃんなの?」



 

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