浮遊

セン

一夜

冷蔵庫のいびきが、静かな夜に響き渡る。

日が変わったことで更新されたweb漫画に、自分の「いいね」だけが色を付ける。それは優越感とも思えたが、世界に自分一人になったような、そんな不安へと変わった。

古びたアパートの、小さな一室。窓から入る信号の光が赤から青へと変わっても、何かが動き出す音は聞こえない。

子供の頃、夜更かしに憧れを持っていた。人々が眠りについているはずの時間に、自分だけが起きていて、それを咎める者は誰もいない。夜なら自由になれると、淡い期待を抱いていた。けれど大人になった今、それは間違っていたのだと思い知った。暗闇と静寂。それらはとても相性が良く、まるで自分の中から何も無くなったかのような、そんな不安に陥らせた。自由を手にして軽くなったはずの心は、空っぽになっただけだったのだと、そう思った。

夜は自由ではない。深く重い暗闇が、私をゆるやかに沈めていく。

自由とは、身軽で、気楽で、けれどもずっと孤独な物なのかも知れない。

私は私だけの静かな孤城で、そう痛感しながら、薄い布団に身を預けた。

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浮遊 セン @sen_nes

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