第五話 第二ウンコ宇宙速度


 72時間の勾留期限を経て、あたしらは釈放された。

「何がSF警察だ」

 ヴァルヴァレッタ様はお怒りっす。もうプリプリ怒ってる。

「オリジナル理論SF解釈にケチ付ける暇があったらおまえがおもしろいの書けって」

 結局、誰もマイナス質量を実証できなかった。マイナス質量ウンコの存在は闇に葬られ、あたしらは証拠不十分のためお咎めなし。そもそもマイナス質量なんてものが存在しないというのがSF警察の主張だ。あたしらは存在しないものを所持していた。すなわち、何も持っていなかったに等しい。

「ヴァルヴァレッタ様。これからどうするっすか?」

「どうにでもなるだろ」

「研究所もなくなっちゃったし」

 いやいやそれどころか王宮の巨大構造物そのものがこの72時間で何処かに行ってしまったのだ。もはやなす術なし。

「研究所はなくてもウ◯コはどこにでもある。竜のウンコの危険性は王宮そのもので証明してみせたんだ。それでいい」

 72時間でウンコは爆発的に増殖した。王宮の建築素材を餌に分裂増殖し、マイナス質量を大量に放出し、ウンコは王宮を飲み込んで空中に飛び立った。偏西風に乗って、どこまでも高く、どこまでも遠く。ヴァルヴァレッタ様とあたしを牢屋に残してウンコは行ってしまった。

「ウンコ、どこまで飛んで行っちゃったんすかね」

「宇宙は広大だ。ウ◯コの反物質作用とマイナス質量をもってすれば惑星脱出の第二宇宙速度なんて無視できる」

「またSF警察がいちゃもん付けそうなこと言っちゃってーもー」

「次はどのウ◯コを攻めようか」

 ヴァルヴァレッタ様はもう前を向いている。己の可憐なタンホイザーゲートをSF警察の面々の前で晒したというのに、清々しい表情をしていらっしゃる。すべてのしがらみもウンコが持っていってくれたっすね。

「エ◯フのウンコなんてどうです? 循環式テロメアの抽出っすよ」

「伏せ字の位置間違ってるぞ」

「じゃあエルフ◯ウンコ」

「もう貴様に背中は見せん」

 ヴァルヴァレッタ様は垂れた耳で空を仰いだ。とても澄んで遠くまで見渡せる空だった。ウンコはもう見えない。ウンコはどこにもなくてもどこにでもあるものだ。思考が脳みそのウンコなのだから。


 おわり

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竜のウンコ 鳥辺野九 @toribeno9

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