怪盗ダウト「優雅な休日」

船越麻央

三題噺ありがたく頂きました

「朝食の用意が出来ましたよ」


 怪盗ダウトはトースターから焼きたてのパンを取り出した。ホカホカの食パンにバターをタップリとぬり皿にのせた。

 ダウトは皿をテーブルの上に置いた。すでにそこにはベーコンエッグとホットコーヒーが二人分並んでいる。

 先ほどダウトに声をかけられた人物が席に着く。


「まあおいしそうね」

「ではブレックファーストをいただきましょう。このような離島へようこそ! ハーツ先生」


 この離島、美女ヶ島に怪盗ダウトの別荘があった。


「さすがはハーツ先生。よく私の招待状を解読しましたね。ポーカー警部は無理だったようですが」

「ご招待ありがとう。怪盗ダウトからの招待状、正直驚きました。でもこの美女ヶ島いいところですね」

「ハハハ、どういたしまして。先生、お世辞が上手ですなあ」


 怪盗ダウト。国籍、年齢、性別、学歴、身長、体重、すべて不明、その素顔は誰も知らない。かの有名な(?)お星様ドロボー。そのダウトの別荘に底辺Web小説作家ハーツ女史が招待されたのである。

 今回、ダウトは黒髪に日焼けした顔、口ひげを蓄えた精悍な姿であった。


『三題噺ありがたく頂きました。ついては美女よりご招待いたします。ぜひお越しください。ダウト』


 この暗号のような招待状。解読できたハーツ女史は今ダウトの目の前にいる。


 今回は『予告状』ではなく『招待状』だった。さらにダウトは『三題噺』をすでに手に入れたと宣言している。お星様ドロボー怪盗ダウトとしては異例のことだ。

 

「それで……この別荘にたどり着いたのはわたしだけなのね」

「いえいえ、これからお見えになる方もいるかもしれません。たとえばこの自主企画の企画主さんとか。誰が来ても大歓迎です。ポーカー警部にも来てほしかったなあ」

「警部さんわたしの所にもお見えになりました。美女とは誰のことだ、ダウトめ何を考えているのか、って頭を抱えてましたよ。わたしには分かりませんとお答えしましたけど。ウフフフ」

 ショートヘアにメガネのハーツ女史はいたずらっぽく笑った。


「ハハハ、先生も人が悪い。あのオッサン元気なんですね。この離島の名が浮かべば簡単に解読出来るんですけどねえ。さあ先生せっかくの焼きたてトーストです、海を見ながらいただきましょう」


 風光明媚な離島、美女ヶ島。海の見える別荘の明るいリビングルームでダウトとハーツ女史は仲良く朝食をとっていた。


◇ ◇ ◇


しかし……怪盗ダウトは次の挑戦状をしっはり用意している。

 

『皆様、お星様をいただきに参上します』


 怪盗ダウトからの挑戦状です。皆様! タイヘンです! キケンです! 今すぐコチラにお星様をお預けください! ハイ、毎度ありがとうございます。


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怪盗ダウト「優雅な休日」 船越麻央 @funakoshimao

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