理想の一日

ヤン

理想の一日

 私が生まれ育った場所は、海も山もある町です。季節によらず観光客が多く、昔は避暑地として別荘を建てる人もいました。洋館です。


 私は洋館が好きなのですが、この生まれ育った場所に影響されているのだと思います。


 住んでいた町に、私好みの洋館がありました。今は個人は住んでおらず、市の物になっています。文学館になったので、改修工事に始まる前は中に入れました。


 建物はもちろん素敵なのですが、広い庭があって、バラ園になっています。いろんな種類の、いろんな名前のついた花々が咲いていて、私を幸せな気持ちにしてくれました。


 庭にはベンチがあります。二人掛けだったと思います。


 ここから、ようやく私の理想の一日の話になります。


 朝、この文学館が開館したら、大好きな人と行って、建物の中の展示物をゆっくりと見ます。お互い、何も言葉は交わしません。


 窓から、離れた場所に見えている海を眺めて、穏やかな気持ちになります。


 建物の中を堪能したら、庭に出ます。バラ園のバラたちを一輪ずつ時間を掛けて見て回ります。かぐわしいその匂いに包まれて、喜びを感じています。


 そして、二人でベンチに腰掛けます。暖かい春の日差し。バラの匂いをのせて、優しく吹く風。明日のことなんて考えません。いえいえ。明日どころか、一時間後のことも、一分後のことすら考えません。


 ただ風に吹かれ、幸せを感じているだけ。心が満たされ、あったかい。この人とここに来られて、一緒にこうしていられること。なんて幸福なんだろう。


 そんなことを考えながら、時間を忘れて過ごす一日。


 私の理想の一日です。


(完)

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