第49話

 マリンから、タンザの家に大量の書物があることを聞いたザフィーア。

 マリンと共にタンザの家を尋ね、実際に自身の目で確認したことで、ザフィーアはルベンに残り天空宮の行き方について調べる事とした。

 これにより、アルディア達はディナで、ザフィーアはルベンにて天空宮への行き方を探すこととなった。

 ルベンに残ったザフィーアは、マリンの計らいもあり町議の仕事を休んだまま、毎日のようにタンザの家を尋ねて書物を調べた。

 来る日も来る日も調べ物に勤しむ一方、時には息抜きとしてマリンと出かけ外食などを楽しみ、そして時には激しく愛し合う夜も送った。

 そして、そんな日々を過ごし、1月の月日が流れた……。


 ――――タンザの家

 この日も天空宮の行き方について調べているザフィーア。

 そんなザフィーアのところへ、マリンが弁当を持ってやって来た。

「ザフィーア。お昼用意したから少し休憩しましょう」

「マリン。……そうだな、少し休憩しようか」

 ザフィーアはマリンにそう言うと、マリンは机の上に持ってきた弁当を広げ、弁当と一緒に持参した水筒のお茶を入れる。マリンの持ってきたお茶は温かいお茶のようで、マリンが水筒から注いだお茶の入ったコップからは、湯気が立っていた。

 マリンが弁当の用意を済ませると、両者は手を合わせ、

「「いただきます」」

 と挨拶。食事を始めた。

 マリンの用意した弁当を黙々と食べるザフィーアとマリン。しばらく食事を続けていると、マリンが突然、

「ところでさ、天空宮への行き方、見つかった?」

 と、ザフィーアに尋ねた。

「いや、残念ながら全く手がかりなしだな」

 ザフィーアは首を横に振り、マリンにそう答えた。

「天空宮への行き方どころか、天空宮に関する記述すら、全く見つからないな。一体、いつ、誰が、何の目的で建てたのか……」

「四柱帝じゃないの?」

「ラファエルがか? この数年で?」

「四柱帝ならできるんじゃないの? 知らないけど」

 マリンはそういうと、箸を置き、お茶を飲む。

 ザフィーアは少し考えた後、

「……少なくとも、ガブリエルはサファイアドラゴンの城を奪っただけだったな」

 と答えた。

「サファイアドラゴンの城って……、以前話してくれた海底城だっけ?」

「そうだ。元々サファイアドラゴンが水魔と共に住んでいた場所だ。故にガブリエルは居城にしていた海底城を造ってはいない」

「そっか」

 マリンはそういうと、再びコップのお茶を飲んだ。

 そして、お茶の入ったコップを机に置くと、

「じゃあさ、もしかしたら天空宮も三神龍の居城とかで、ラファエルもそれ奪っただけなんじゃない?」

 とザフィーアに言った。

「三神龍か……」

 マリンの話を聞き、そう呟くザフィーア。

 そして少し天井の方を見た後、

「天空宮のことばかり調べていて、三神龍や聖石の線は考えなかったな。その線でも調べてみるか」

 と言うと、椅子から立ち上がった。

 ザフィーアが椅子から立ち上がると、マリンは空の弁当箱とお茶の入っていたコップを片付け始める。そして、片付け終え、弁当箱と水筒、コップを簡単にまとめると、

「ま、あんまり無理はしないでよね。あんた、いつも夜遅くに帰ってくるし」

 と、ザフィーアに言葉をかけた。

 そして続けて、

「別に、調べてるのはあんただけじゃないんでしょ? アルディアちゃんたちが先に見つけてくれるかもしれないんだし、あんただけが頑張る必要ないんだからさ」

 と言うと、片付けた弁当一式を持ち、タンザの家を後にした。

 ザフィーアはタンザの家を後にするマリンを見ながら、

「(まぁ、見つけるとしたら、エスメだろうな……)」

 と、心の中で呟きながら、マリンの背中を見送ったのであった。


 マリンが帰った後、引き続きタンザの家にて書籍を調べるザフィーア。

 マリンのアドバイスを基に、今度は三神龍や聖石に関する書籍も含めて調べ始めた。

 だが、三神龍、聖石もそもそもが神話でしか見聞しない内容。そのため、それらに関する書籍についても容易には見つからなかった。

 こうして、マリンが来る前から変わらず、時間を忘れ書籍を調べるザフィーア。

 調べ始めてからどれ位の時間が経ったかわからない位、時間が経過した時。ある書籍を手にし、中を広げたザフィーアは思わず目を見開いた。

「これは……」


 ――――ザフィーアの家

 日が暮れ、外が暗くなった時間。

 マリンは台所でザフィーアの分も含め夕食の準備をしていた。

 日が暮れた時間になっても戻らないザフィーア。今日もいつも通り、夜遅く戻ってくるのだろうか? そう思いながら、マリンは台所に立っていた。

 すると、

「ただいま」

 と、玄関の方からザフィーアの声が聞こえた。

 ザフィーアの声を聞いたマリンは、台所を後にし、玄関に向かう。

「ザフィーア、おかえり」

 玄関にやって来たマリンは、ザフィーアに声をかける。

「マリン。すまない、今日も遅くなった」

 ザフィーアはマリンにそう詫びる。

 マリンは特に気にする様子もなく、

「今、夕食の準備してるから、上がって待ってて」

 と言うと、そのまま小走りで台所へと戻っていった。

 ザフィーアは、そんなマリンの背中を見送り、家の中へと上がっていった。


 マリンのつくった夕食を食べる両者。

 ザフィーアが食事を終え、食後のお茶を飲んでいると、マリンがザフィーアに尋ねた。

「今日、どうだった?」

 いつも夕食時に尋ねるマリンの一言。

「一冊、気になる本が見つかった」

 マリンの問いかけにそう返し、持っていた本を見せるザフィーア。

「へぇ。何か書いてあったの?」

 ザフィーアの見せた本を見ながら、マリンはそう返す。

 いつもであれば、ザフィーアの口からは成果がなかった旨の回答しか聞けなかったマリン。だが、今日はザフィーアから少し成果があった旨の回答を聞けたため、マリンは思わずザフィーアに本のことについて尋ねたのであった。

「三神龍に関わる内容だ。もしかしたら、天空宮へ行くための手がかりになるかもしれない」

「そっか」

「明日から家でこの本について深く調べようと思う。ありがとうマリン。君のお陰で先に進めそうだ」

「いーわよ、お礼なんて」

 マリンはザフィーアに対しそう言うと、手に持っていた湯飲みのお茶を飲むのであった。


 ――――ディナの都

 ザフィーアがタンザの家から本を持ち帰ってから数日が経過した。

 同じくディナの都にて天空宮の行き方について調べていたエスメラルダの下に、ミニオンが持ってきた手紙が2通、届いた。

 エスメラルダはミニオンが届けた手紙を受け取り、便箋を確認する。差出者はザフィーア。手紙は1通はエスメラルダ宛、もう1通はディア宛のものであった。

 ザフィーアからの手紙を受け取ったエスメラルダは、自分宛の手紙を読むと、

「アル、ルー。ちょっといい?」

 と、アルディアとルービィを呼ぶ。

「エスメ君?」

「何かあった?」

 エスメラルダに呼び出されたアルディアとルービィは、エスメラルダのところへ行くと、そう尋ねる。

「ザフィから手紙が来た。ディア様宛の手紙もあるし、報告も含めて今から屋敷へ行こう」

 エスメラルダはそう言うと、アルディアとルービィを連れて屋敷へと向かったのであった。


 ――――ディナの屋敷・客間

「お待たせして申し訳ない」

 ディアはそう言いながら、客間に入る。

 客間にはアルディア、エスメラルダ、ルービィの3者がソファに座って待っていた。

「いえ、こちらこそ、突然お伺いして申し訳ありません」

 エスメラルダは立ち上がると、そう言い頭を下げた。

「いえ、構いませんよ。ザフィーア殿から、手紙が届いたとの事でしたな」

「はい。1通、ディア様宛のものもありますが」

 エスメラルダはそう言うと、ディア宛の手紙の便箋を渡す。

 ディアは受け取った便箋を開けると、手紙を読む。

「ザフィーアからは何と?」

「タンザ殿……ハインに殺されたザフィーア殿のお義父上の事です。葛籠を差し上げていたので、その件も含めてのお礼ですね」

「そうですか……」

 ディアの回答にそう言うと、少し俯くエスメラルダ。

 ザフィーアからはタンザの件は聞いていたが、改めてディアからその件を聞き、エスメラルダは表情を曇らせるのであった。

「さて、エスメラルダ殿の方からの内容について伺っても?」

「あ、はい。ザフィーアから僕の方に届いた手紙はこちらです」

 エスメラルダはそう言うと、懐からザフィーアからの手紙を取り出し、ディアに見せる。

 ディア、そしてアルディアとルービィは、エスメラルダが差し出した手紙の内容に目を通した。ザフィーアからの手紙には、天空宮へ行く手がかりが見つかったから、ルベンに来てほしいとの内容が書いてあった。

「天空宮へ行く手がかりですか」

「はい、そのご報告です。僕たちは、今から準備してルベンに向かおうと思います」

「そうですか。わかりました。ザフィーア殿に、よろしくお伝えください」

「ありがとうございます。お世話になりました」

 エスメラルダはそう言うとディアに頭を下げた。

 それを見たアルディアとルービィも、同じようにディアに頭を下げた。

 その後、アルディア達は屋敷を後にし、港町ルベンに向かって旅立ったのであった。


 ――――港町ルベン・ザフィーアの家の前

 ディナの都から旅立ち、数日後。アルディア達は港町ルベンに辿り着いていた。

 ルベンに辿り着いた一同は、そのまま真っ直ぐとザフィーアの家に向かって歩みを進める。

 そして、ザフィーアの家の前へと辿り着いた。

 ザフィーアの家に辿り着くと、エスメラルダは戸をノックする。

「は~い」

 奥から聞き慣れた女性の声が聞こえた。

 そして、戸が開くと、そこにはマリンの姿があった。

「あら、あんた達、いらっしゃい」

 戸を開け、アルディア達の姿を見たマリンは、笑顔でそう言う。

「ご無沙汰しております。この度は、ご愁傷様でした」

 エスメラルダはそう言うと、頭を下げる。

「いいわよ、そんな他人行儀な挨拶。ザフィーアが呼んだんでしょ? さ、中に入りなさい」

 マリンはそう言うと、アルディア達を家の中へと上げたのであった。


 ――――ザフィーアの家

 ザフィーアの家に上がったアルディア達。アルディア達はマリンが用意したお茶を飲みながら、ザフィーアが来るのをその場で座って待っていた。

 すると、そこに奥からザフィーアがやって来た。

「アル、エスメ、ルー。突然呼び出して申し訳ない」

「いや、いいよ。こっちも全然手がかりが見つからなかったし」

 ザフィーアの言葉にそう返すエスメラルダ。

「それで、手紙に貰った内容だと天空宮へ行くための手がかりが見つかったって事だけど……」

「ああ、そうだな」

 エスメラルダにそう返すと、手に持っていた本を一同の前に出すザフィーア。

 そして、話を続けたのであった。

「天空宮へ行く方法の手がかりについてだが……、『バベル』だ」

「「「バベル?」」」

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聖女物語 野ウサギ座 @lepre-stella_3yo

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