コレクション ーカクコン10 短編お題『骨』ー

姑兎 -koto-

第1話 コレクション


彼女は、ボーンコレクター。

コレクションルームには、様々な動物の骨のサンプルが保管されている。


出会った日も、彼女のあまりの美しさに声を失う僕に「奇麗な骨格ね」と言って、うっとりと僕の鎖骨を眺めていた彼女。



今日、初めて、コレクションルームに誘われた。

「怖がらなくても大丈夫よ。ほとんど、然るべき所から然るべきルートで合法的に手に入れたものだから呪われたりしないわよ」とは、言われていたけれど。

実際目にしても、確かに、何の気配も感じない……ような気がする。


軽く嫉妬を覚えるほどに、一つ一つ愛おしそうに手に取り、説明してくれる彼女。

そして、最後に手に取った骨に口づけして「これは、元カレの骨」と。

その後すぐに「嘘よ」と笑ったけれど、僕にはわかる。

彼女のまなざしが『本当』だと物語っている。



彼女は、不安そうに黙り込む僕の鎖骨に触れ「おバカさん。心配しなくても大丈夫よ。、殺したりしないから」と微笑み、問わず語りを始めた。


「この骨はね。取り返してきたの。不倫だったのに取り返すというのも変だけれど」と、遠くを見つめ「この人は、バラ園に眠っていたのよ」と、その姿を思い浮かべるように目を閉じた。

そして、僕を見ると「もう昔の話しだけれど。彼は、急に姿を消したの。風の噂で奥様の元も去ったと聞いていたけれど。まさか、今も奥様の元に居てこんな姿になっていたなんてね」と寂しく微笑んだ。


かける言葉が見つからず、つまらないことだと自覚しながら「警察には届けたの?」と尋ねると「そんなことして何になるの?彼は帰って来ないのに。更に奥様を苦しませるだけだわ。それに欲しかったモノは取り返せたから」と。

そして、スッと手を伸ばし僕の鎖骨に指を這わせながら「彼の指は、とても美しかったのよ」と独り言のように言った。


彼女は、ずっと、彼を探し続けていたのだろうか。

僕と出逢った後も、それは変わらなかったのだろうか。


彼の死は自分のせいでもあると思っているのであろう彼女。

自身の罪深さと比例して愛が深まることもあるかもしれない。

骨愛でる心優しい彼女の元に帰ってきた物言わぬ

その指は、今も尚、彼女の心をつかんで離さない。



彼女は魔性の女。

彼女のコレクションの為ならば、一肌どころか皮も肉も脱ぎ去って骨になってもいいかなと思い始めている自分が怖い。


ー完ー








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