騒動とゲンジツ
なんやかんやで今学期の文芸部の部誌が発行された。部員皆で無心に製本する時間は少しピリピリしていて苦手だ。しかし、終われば手元には自分たちの努力の結晶が詰まっている。今回は例年よりもかなり分厚い。書けなくて予定より薄くなることはままあれど、厚くなるとは珍しい。
パラパラとページをめくっていると、気になるページを見つけた。『骨格標本のボーン』というタイトル。作者は小鳥遊先輩だった。読んだ。頭を抱えた。
内容は、こうだ。
骨格標本のボーンは学校の理科準備室に埃をかぶって封印されていた。しかし、ある日赴任してきた理科教師によって、うっかり封印を解かれ身柄を狙う妖怪や裏社会の組織といった敵と戦うことになる。そんな話だ。
バトルあり、ラブあり、コメディありの大傑作。部誌の三分の二を占めるボリュームだった。熱量がすごい。
「先輩、これ……」
「あ、読んでくれたぁ? いやあ、あすみちゃんがあの子の名前を教えてくれたからアリだなぁって思って気がついたらこの分量になってたのぉ」
「はあ、その許可とかは?」
「取ってないけど」
「そうですが」
ばれたら死ぬのでは?
そんなことを思いながら今日の部活は解散になった。
しばらくたって、部誌の余韻も薄れてきたころだった。
「八代木はいるか」
放課後、柳先生から呼び出しを食らった。教室で帰り支度をしていたので少し目立った。相変わらずの無表情で、ちょっと怖い。
「い、いまーす」
「ついてこい」
「はい……」
荷物を持って先生を追いかける。先生はズンズンと先に進んで行く。相変わらず、ボーンを小脇に抱えている。そして今、ボーンの顔(頭蓋骨?)は私の方を向いている。しかし、やはり骨だからか表情は読み取れなかった。
理科準備室に着く。先生はボーンを椅子に座らせた後、自分も勢いよく椅子に座った。深いため息。
「座れ」
「え」
「す・わ・れ」
「はい……」
圧に屈した。椅子に座る。即座に、ボーンが勢いよく話しかけてきた。
「ヤシロギの部活の本、おもしろかった~!」
「お前はいったん黙ってろボーン」
しゅん、とするボーン。その様子に柳先生がため息をつく。そして、白衣のポケットから本を取り出した。それは、先日できたばかりの部誌だった。
「この小説のせいで大変なことになった」
「はあ」
「この部誌のせいなのか、ボーンが面白がった結果なのかは知らんが、学校内で作中に出てきた妖怪が発生するようになったんだ」
「えっ」
どういうこと? 先輩の小説が現実になった?
「責任を取れ」
「いや、ボーンの小説は私は書いてなくて……」
「そうだとしても、誰かにボーンのことを教えただろ」
「名前しか教えてません……」
「本当のことを吐け」
「ホントです、信じてください」
暖簾に腕押し。先生は私がボーンが動くことを誰かに話したと考えているらしい。本当に名前しか言っていないはずなのに。先生の「言うなよ」が怖かったから言ってないのに。
そんなやり取りをしていると。
バターン。
「ヒャッハー!!! 今日こそ、お前の力を頂くぜ、ボーン!!!」
理科準備室と理科室を繋ぐ扉が壊れて、人体模型が現れた。めっちゃ動いて、喋って、現れた。目玉がギョロッと動いている。
「人体模型なら、理科室仲間では!?」
「チッ、ボーンは俺の私物だから。というか、こういうやつが最近現れるようになったんだよ」
「ええ……」
確かにこれは大変かもしれない。部誌が原因というのも変が気がするが。
「人体模型! 今日もボーンは負けないぞ~」
そして、ボーンはとてもやる気。先ほどまでの気落ちはどこへやら。シャドーボクシングをして、人体模型を牽制してる。骨だからなのか、カラカラ音がしている。
状況が変すぎて、先生の顔色をうかがう。しかし、先生はいつも通りの無表情で、表情は読み取れなかった。
「とにかく、こういうわけだからお前には責任を取ってもらう。いいな?」
柳先生は念押しして言ってきた。すでに、私は関係ないとは言える雰囲気ではなくなっていた。
「はい……」
そう言っている間に、ボーンが人体模型に勝利していた。
「勝利のピース~」
ボーンは大変楽しそうにピースをしている。柳先生はそれを見て頭が痛そうにしていた。
こうして、私はしばらくボーンの妖怪退治に付き合うことになったのだ。
うちの中学の理科教師はかなりヘン 先崎 咲 @saki_03
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