❄️6🌹
お夕飯の食器を片付けてて、ふとテーブルの上の健康診断案内の封筒が目に留まる。
封筒の宛名は【吉田 暁生】――もちろん僕じゃなくてアキオ宛だ。サンタ研修の前に受けなきゃいけない健康診断なんだって。
でも、アキオの漢字って初めて見たな。
郵便物は全部アキオに渡してたからかもしれないけど、一年も一緒に住んでて全然気づかなかった。
「アキオのアキって漢字、<
そう話しかけると、アキオは中身の案内に目を落としながら「そうだよ」とぶっきらぼうに答えた。
アキオは、さっきからずっとこんな調子だ。
夕方に帰ってきてずーっと膨れてる。でも今回ばっかりは僕にも思い当たる節がない。また気づかないうちにアキオの不快ポイントを加算させちゃうような事言ったかな?
「ねぇ、さっきから何怒ってんの」
「怒ってないですぅー」
「その……さっき抱きついちゃったこと、怒ってんの」
「んなわけあるかいッ! ご褒美クソ最高でしたぁ!!」
本音ダダ漏れだよ、君。
でもあれは不慮の事故(?)で、別にご褒美じゃないし……。
「じゃあなに。言いたいことは言えって言ったの、君だよ」
すると少し間を空けて「あのガキと仲良さそうじゃん」と小さい声でボソッと言った。
これひょっとして……ヤキモチ、焼いてる?
「待ってよ。だってあの子、小学生だよ。しかも好きな子いるし」
「カンケーねぇよ」
「えぇ?」
「近くにいたら、好きになっちゃうだろうが……」
なに、ソレ。
視線を脇に逸らして口を尖らせるアキオを見て、胸がどきんと跳ね上がる。
あれ、なんだろう、僕——。
ぎゅっと胸が締め付けられて、だんだん早くなる心臓にくらっとめまいがして——。
僕の腕はアキオの体をギュッと抱きしめていた。
「ユキ先生。ジブン一時間、このままでイイっすか」
「からかわないでってば……」
急に恥ずかしくなってきた。
僕だって自分でどうしてこんな事しちゃったのか分からないのに。
「ごめんて。でも先生はマジだよ。ユキは頭良いし、面倒見いいから」
「だから無理だって。中卒の僕じゃ」
「経歴も学歴も上のヤツがスゴイって訳じゃねぇよ。オレの少年サッカーのコーチ、名門スポーツ校卒じゃないし、J1選手でもなかったけど、けど良いセンセだった」
「そう、なんだ」
「だから良いじゃん、センセ。中卒が嫌なら高校入り直せばいいし、考えてみれば」
「ん……」
もういちど高校生になる、か。
考えも、しなかったな。
「僕、ホントはあか色って好きじゃなかったんだ」
「え、なんで?」
「ん、まあ、ちょっと。でもたった今、好きになったよ」
大好きの気持ちがこもった一生懸命なバラの色。
僕に温もりを届けてくれたサンタの色。
深い闇に落ちていた僕の心を明るく照らしてくれた、夜明けの暁の色。
僕達の行く先を幸福色に染めてくれる鮮やかな色。
幸福の色色 トヨタ理 @toyo_osm12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます