LAST お役所がんばれ
僕の住んでいる都市にも一応文学フェスティバルみたいなやつがある。
少なくともそう銘打ってある。しかし、これは市町村が主催している。要するに税金で運営されている。
これはかなり……致命的なことだと僕は思う。公金を投入した以上は責任が伴う。
成果を出さなければならない。しかも市民に説得力のある形で。
この場合の成果とは何か?
動員である!
利益がでなくともよい。しかしそれなりに動員がないと
「市民は楽しんでくれました!」
と言えない。
「たったこれだけしか人が来ませんでしたァ!」
「なにやってんだおめー、来年度予算なし!」
……がありうるのだからな。
これね、すっごく大変だと思う。ご担当への同情を禁じ得ない。
書いたり描いたりすることに、成果が義務付けられるのは不自然だ。好きだからやっている。成果が見合うからするわけではない。報酬を得る得ないとはまた別の、原初的なお話ね。
この点さ、民間の即売会はよく知らないけど、費用と収入がまあまあ釣り合えば継続できる。関係各位、みんな好きでやってるもんね。
だがお役人さんは、他人様の好きと仕事の成果をかならず両立せねばならない。いや~。文化振興って大変だなァ。
そんな一連のイベントに行ってきたので、ざっと内容を並べるぜ!
一.『ナントカ文学賞贈呈式』
とある会場。大きめ公民館くらい。
ここでは『ナントカ文学賞贈呈式』というものがある。このナントカいう人物は、地元出身の文豪らしい。僕は名前も知らなかった。
そういった郷土の英雄の名が冠されている以上、やはり地元の文化を主題に多くの名作を残しただとか……そういう人だろうか。
あっコラ。こいつ東京の名門私大いってるぞ。わりと早めに上京してかなり戻ってきてない。これはいいのか。許すのかっ。
ともかくなぁ。なんだこれ。
つまりこれ、授賞式だろ? 賞を
授賞式愛好家の市民とか、いないだろう多分。世界は広いから分からないが、多くはいないだろ。
さすがにこれでは動員が見込めない。
だからかもしれないが、僕の知らない作家さんと僕の知らない作家さんが対談するコーナーもある!
なるほど。うーん。んー。んんーー! ……なにやらムズムズ悶える。んー⁉
ない……身近な感じ、身内感とでもいおうか。当事者感が全く湧かない。すごく他人事な感じがしてしまう……。楽しめない予感。
だってどちらの作家様も僕は知らない。文芸は工芸や美術のようには行かない。陶器やら骨董やら絵画なら、ボヘーっと眺めに出かける気にもなる。眺めているだけで楽しい。
しかし、読んだこともない作家さんが二人語り合う。著名なシラン人が語り合う。うーむ。え~。んー! んー? どうだろー!
お布団でジタバタする。行きたくない……という事はない。が、グイっと心にこない。グワッーと行くほどの動機にならない。
油断すると本かコントローラに手が伸びる。そして怠惰な休日のいっちょ上がりである。実際そうなった。
しかしだな。こうしてネタにする以上は僕も調べている。後追いは済ませている。そのくらいの誠意はあるんだぜ。
この会場は満員になったようだ。まあ、なると思う。公民館サイズなので。
二.『古本屋ストリート』
これは良かった! すごく良かったものも紹介する。
『文学ストリート』みたいな名前のイベントである。これは良かった。
どんなものかというと、近隣の古書店主さん達が雁首と本棚をならべ、ずらーっと数百メートルくらいの古書の露店アーケードを形成してくれているのだ。
(こんなに日光に当てちゃって大丈夫なのだろうか?)
と頭をよぎったが、そこはやはりガチの古書はなかった。セカンドハンドくらいの気軽さ。それは、つまりは安いという事だ!
僕は夢の通りを何往復もした。
私の女は、
「もう気になったヤツ全部買えばいいじゃん、疲れた」
だの不平をたれていた。あのさァ。君はもっと知とかね? 感動とかのありがたみとかにだね? 思いを馳せたまえよ。
俺が買った本は、誰かが買いたかった本なのだ。買ったうえで俺が読まなかった本は、誰かが読みたかった本なのだ。ほしくもない古本を買って帰るという事は、誰かがその本と出合う運命を奪ったうえ、死蔵させるのだぞ。
古書なんてのは一期一会なんだから、それはやってはいけない。
このイベントは本当に良かった。こういうのだよ!
こういう、本好きなら誰もが主役で当事者になれるやつを、やるんだよ!
応援する! 毎週やれ。毎秒やれ。
三.『即売会……なのか?』
一番ぼくのスキキライ虫が騒いだのが、なぜか小学校だか中学校の旧体育館を利用して行われたイベントである。
少数ながらブースがある即売会。あとはファミリー向けにワークショップがある。豆本つくりみたいなヤツ。
これにNPO代表だの地元作家の、またナゾの他人講演会が加わる。ねえ、これ要る? この講演とかって要る?
キライポイントその一。『上履きをご持参ください』
もうこれだけでキライ虫が絶叫。やる気が感じられない。
養生しろ! よ・う・じょ・う・を! するんだよ!
知ってるだろ養生。プラベニで、床面養生をしろ。とにかく土足でご来場をさせろ。これは決して「来場者を大事にしろ」とか幼稚な主張してる訳ではない。上履きを持ってこなければならない……ということはだな。
車椅子の人はどうする。
介助者にタオルで車輪をしっかり拭いてもらわなきゃいけない。杖をついている人は、しっかりと杖先をキレイに拭わなければならない。
あと……買い物用のイス兼手押し車みたいなやつ。シルバーカートなどと呼ばれるアレ。あれ押して来たおじいちゃんもおばあちゃんも、タイヤの土を拭わなければならない。。
よーするに、公共事業のくせにハンディキャップ勢への想像力があまりに乏しい。実際、手伝いができるほどスタッフもいなかった。だから……養生をしろ。
自治体開催だからこそ、そうするのだ。予算が足りないのならナゾの講演をやめろ。ノーギャラじゃないだろそのゲスト。キャンセルしてその費用で養生しろ。
すでに駅前でワンカップ大関飲んでクダまいているナゾおじさん並みに文句たれているが、俺のスキキライ虫の一人カラオケはさらに続く。
上記の通り、小規模ながら同人誌即売会がある。出店希望者への案内があるのだが……募集要項にこう書いてあるのである。
『成人向けの内容を含むものはだめだよ』
そうだね。役所がイイよとは言えないよね。
『二次創作もしくは他者の著作権を侵害するおそれがあるとダメだよ』
完全に許す。OKですとは言えない。許す。
『違法行為を助長し公序良俗に反するのはだめだよ』
おまえは絶対に許さん!
まずはイチャモンからつける。教科書屋さん以外、出店できんぞ。いや待て……教科書もアヤシイかな。太宰も夏目漱石も森鴎外もモームも、不貞行為を描写している。メロスと王とセリヌンティウスなんてなぜか熱い殴り合いしてる。
ごんぎつねを読んで
「ぼくも鉄砲ぶっぱなしたいなぁ、いっちょう自作しよう」
と思う人はいないであろう。きっといない。が、なぜそう言い切れるのか。
落ち着け。わかってる。俺は今、本当にひどいイチャモンをつけている。
だってさ、結局本当にヤバイ出店者があらわれたら。お役人さん、コッソリはじいちゃうでしょ? こっそり教えてくれ。誰にも言わないから。ほんとほんと。こっそりはじくでしょ?
抽選にもれたので、とか、適当なこと言って出店させないでしょ。審査の基準は非公開なので~とか、相手にしないでしょ。だからこれ、あってもなくてもいい要項なんだよ。なら形だけでも自由感出しておけ。
歌や踊りは法の外なのだよ。
やはり、芸事とお役所は相性が悪い。
※まとめ
・ちょっとすっきりした
・文フリ香川は予定が入っていけなかったので来年。
・文フリ広島は日帰り旅行お手軽感がピッタリ。また行く。
・温泉好きなんだけど、温泉とコラボしてくんないかなぁ。文フリ温泉。
あ、なんか文フリ広島行こう。【短期ベタ打ち集中エッセイ】 秋島歪理 @firetheft
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